記念館の庭園

普段は立ち入ることのできない庭園もこの日は見学することができた。ウメやシダレザクラ、アジサイ、モミジやキンモクセイなどの様々な樹木が植えられていて、1年を通して楽しめる庭園となっている。奥の木陰には「筆塚」なるものがひっそりとたたずんでいた。この「筆塚」は、使えなくなった筆たちを捨てられなかった恒子が、感謝の気持ちを込めて庭の一角に埋めたものだそう。優れた作品を生み出した背景には、このように筆を大切にする恒子の優しさがあったのだ。この筆塚の上に立つ石碑に刻まれている「ありがとう」の文字は、恒子が病床で最期に書いたもの。ところどころ線が震えてはいるものの、最期の書にふさわしく恒子の思いがこもった力強い書である。直筆のものは展示室内で見ることができる。

筆塚。石碑には「ありがとう」の文字が刻まれている

書道体験

ほかにも、恒子が愛用していた書道道具や、書斎も見学することができる。2階では、庭の景色を見ながら実際に書道体験をすることも可能だ。

庭の緑を眺めながらの書道体験。作品には記念館の印を押してもらうこともできる

熊谷恒子記念館では月に1回、ギャラリートークを開催しており、そこでは庭園を見学することもできる。暑さが続くこの夏に、心が洗われるような美しい書を鑑賞して涼をとることをおすすめしたい。
(濱田安里子)

かなの美展「やまとうたの風趣」

2018年4月28日(土)~8月26日(日)
会場:大田区立熊谷恒子記念館(東京都大田区)
時間:9時~16時30分(入館は16時まで)
休館日:毎週月曜日(月曜祝日の場合は翌日)
料金:大人(16歳以上)100円 小人(6歳以上)50円