《大人になる、ということ》コミュニケーションの道具として お酒の功罪を考える

大人になる、ということ

成年になるまでは飲むことが禁じられている酒類。単なる嗜好品でありながら、未成年と成年を区別する。アルコールが個人に、人間関係に、社会に与える影響も大きい。「大人になる」にあたって、お酒との向き合い方を考える。

株式会社酒文化研究所の代表・狩野卓也さんは、「お酒は、コミュニケーションの道具のひとつである」と話す。大学生、社会人となっていくにつれて、多くの人と関わる必要性が生まれる。その中で、飲み会は手軽にお互いのことを知る機会になりうる。

確かに、近年になってコミュニケーション手段の多様化で、若者の酒離れが進んでいることも事実だ。携帯電話、スマホ等が普及し、メールやSNSでの会話が盛んになった。これらはコミュニケーションの道具として、お酒に取って代わる機能をもっている。

一方で、交流の手段が多様化してもなお飲み会が行われる背景に関して、狩野さんは「『一緒にお酒を飲んだ』というお互いの共通認識が、人間どうしを近付ける効果がある」と説明する。

一緒に食事をすると、食事の仕方や作法から、自然と相手の人となりが見えてくるものだ。アルコールは理性のコントロールを弱めるため、一緒にお酒を飲むと、単に食事をする以上に、相手に隠していた自分がどうしてもこぼれ出てしまう。また、飲み会の席で交わした会話の内容だけでなく、トラブルが起きることなく楽しく過ごせた事実そのものによって、信頼して付き合える仲間であることを確認できるという。

このように、お酒は人間関係を築く観点で、良い影響を与えることがある。一方で、飲酒によるリスクは数多く存在するというのもまた事実だ。
久里浜医療センターの木村充医師によると、アルコールは60以上もの病気の原因であるという。過度な飲酒が肝臓や膵臓へのダメージとなるのはもちろん、脳が発達段階にある10代に飲酒をすると、脳が委縮し、将来、認知症になるリスクが高まるのだ。厚生労働省の定める「節度ある適度な飲酒」は一日アルコール20グラム。この客観的な数値を頭に入れておくことが健康的な飲酒に繋がる。

また、アルコールは個人だけでなく社会にも大きな悪影響を及ぼす。攻撃性や性欲などの本能や感情は、普段理性によって抑えられている。だが、アルコール摂取によりその理性が外れたことで、社会問題になりうる大きな飲酒事故や事件を起こすリスクが高まる。

では、誰もがその可能性を持つのかというとそうではなく、お酒の酔い方が深く関わってくる。酔い方には3種類あり、普段の人格を保ったまま酔う単純酩酊。怒りっぽくなったり、人によく絡むようになったりするなど、普段と異なる人格が現れる複雑酩酊。そして、幻覚や異常行動を見せる病的酩酊がある。その時の酔い方に伴ってリスクの度合いは異なるが、飲酒量によっては単純酩酊であっても飲酒事件や事故は起こりうる。自分の酔い方をあらかじめ理解し、飲みすぎることのないようにすることが何よりも大事だと木村医師は話す。

狩野さんは「味覚が敏感な若いときにこそ、お酒の量ではなく味を楽しんでほしい」と強調する。お酒の味を考えながら飲むようになれば、むやみにアルコールを摂取することはなくなり、酔った状態だけを楽しむ飲み方はしなくなるだろう。お酒をじっくり味わうことは、飲酒を適量にし、お酒のリスク減少につながるという。

気分を高め、仲間とのコミュニケーションを促進する道具のひとつとして好まれるお酒。「大人になる」うえで、その道具の利便さと功罪を理解し、自分と向き合うことの大切さが問われる。

(松尾美那実、満井崚)


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