《働き方ケイカク》第3回 高度プロフェショナル制度の期待と懸念

働き方ケイカク

鶴光太郎教授(写真右)と黒田兼一教授

高度プロフェッショナル制度(以下、高プロ)とは、年収1000万以上の高度な専門知識を必要とする業務にあたる労働者が、健康確保措置を条件に、労働時間、休日、深夜割増賃金などの規定から除外される制度だ。これがなぜ反対されるのか、そしてなぜ政府は推進するのか。慶大大学院商学研究科の鶴光太郎教授、明大大学院経営学研究科の黒田兼一教授に話を聞いた。

懸念に歯止めをつくり生産性の向上へ

現在、高プロの対象者として予定されているのは、金融商品開発者や、金融商品のアナリストたちだ。これらの仕事について鶴教授は、「成果や結果で仕事をみられるべき人たちだ」と説明する。鶴教授は対象者について「みなプロで、自分なりの知識を持っている。自分でやるべきことを決めていて、誰かに命令されて働くような人ではない」と述べる。

しかし、このような人達は自由に働けるからこそ、長時間働いてしまう可能性がある。鶴氏は「健康確保措置の義務はそのための歯止めだ」とする。

また、長時間労働に対する懸念について鶴教授は「高プロの適用には本人の同意と、労使委員会で労働者側から賛成が必要だ。だからもし、使用者側が過労死させるような内容を提示すれば適用ができない。それに適用に同意した後でも酷いものだとわかれば拒否することもできる」と述べる。

制度の導入について鶴教授は、「成果で払っていくのだから、成果が見えやすいもの、かつそのような業種でないといけない」としつつ、「成果で給与を与えるのだから、短時間で効率よく成果を出そうとし、生産性が上がる」と賛成を示す。

そして反対派が根拠とする将来の制限の緩和については、「将来どうなるかの心配を反対にするのは、仮定の議論でフェアな内容ではない」と述べ、「逆に現在の規制はきつすぎる。もっと規制を緩和していくべきだ」と見解を示した。

また、反対論調について、「高プロの対象者はごく少数だ。そこまで大きな問題として取り上げるべきものだろうか。それに導入しても、対象者は少ないからインパクトは小さいかもしれない。反対者の意見は杞憂に終わることもあり得る」と反論した。

つのる危機感:長時間労働まん延と適用者の制限

高プロにおける労働規制の適用除外について黒田教授は、「労働時間の規制は必要だ」と述べる。
黒田教授によると、高プロは対象となる仕事に従事する人の時間管理をやめて、成果だけを見るという制度だ。

しかし、会社が労働時間を管理しなくなると、「働き過ぎが労働者の自己責任に転嫁されかねない」と指摘する。健康管理や労働時間の管理が労働者の判断によるものとなるからだ。場合によっては過労死さえもが自己責任になってしまう可能性もある。

黒田教授は「このままでは長時間労働がまん延する事態になりかねない」と、危惧する。

だが高プロには、契約後に社員が自ら契約を解除できるという制度がある。高プロで長時間労働を強いられるなら、労働者自らが高プロを拒否すればいい。

しかし黒田教授は「会社の中の人間はそんなに強くない」と実現を疑問視する。

現在、残業は労働者側が同意をしない限り法律で禁止されている。しかし、現状ではサービス残業が問題視されているように、常識的に難しいのは明らかだ。

また、適用者の制限について「緩和されるのははっきりしている」と危機感を募らせる。

これまで派遣法や裁量労働制は、強い規制をかけて導入された後、次第に緩和されていった。現状、経済界には制限の引き下げを求める声もある。

「高度な専門職だから会社と闘えるという理論も、制限が引き下げられれば無理だ。労働に関する法律は、社会が会社を規制することで労使を対等にさせるためのものだ。大切なのはこれらの法を守ったうえで、効率的に人を働かせることだ」

(伊藤周也)


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