特別展「人体」 身体の不思議を解き明かす

レオナルド・ダ・ヴィンチ「解剖手稿」より頭部断面、脳と眼の結びつき部分 1490-1492年頃 ウィンザー城王室コレクション所蔵 Royal Collection Trust/© Her Majesty Queen Elizabeth II 2018

特別展「人体―神秘への挑戦―」が、上野の国立科学博物館にて、3月13日から今月17日まで開催されている。この特別展は、人間がいかに自分たちの体を探求してきたか、という大きなテーマを掲げている。人体の秘密を探る旅だ。

従来、人間の体というのは、解剖してはならないものであった。つまり、神秘に満ちた存在であった。しかし、レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめとして、人体を解剖した図が描かれるようになった。この特別展では、彼の解剖手稿が展示されている。画家でもあった彼の、人の身体を観察する眼は鋭い。

心臓、肝臓、腎臓、脳など、人間の臓器がどのように働いているか詳しい解説を見ることができる。また、ほかの動物との比較もなされており、一部スペースには、本物の人間の臓器が標本として展示されている。

これまでは、脳が全身の内臓をつかさどり、指令を出していると考えられてきた。しかし近年では、内臓同士がコミュニケーションをとって、相互に反応しあっているということが分かってきた。いわば、「メッセージ物質」を送りあうのだ。例えば、心臓が疲れると、ANPという物質が放出される。「疲れた。しんどい」というメッセージが、腎臓に送られる。すると、腎臓は、尿を生み出す器官であるため、尿の量を増やして血液量を減らす。このことによって血圧が下がり、心臓の負担は軽くなるのだ。

このような内臓同士のコミュニケーションを音と光で表現した「ネットワークシンフォニー」は幻想的な空間であった。また、「体内美術館」のコーナーでは、ラットの臓器などのサンプルに特別な処置を行い、イメージ色を付けたものが画廊のようにずらりと飾られている。丸い形、でこぼこや奥行きもしっかりとわかるような作りである。自分の身体がなんだかいとおしく思えてくる。

このように考えると、人体とは一つの芸術作品であると言ってもよいのかもしれない。この特別展に足を運べば、人体の不思議に全力で向き合った先人たちの努力に拍手を送りたくなる。また、当たり前のように日々過ごしている自分の身体をそっといたわってあげたくなるかもしれない。

(下村文乃)


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