おもしろいをつくる現場 ピタゴラスイッチ制作グループ ユーフラテス

山本晃士ロバートさん(右)と貝塚智子さん(左)

ボールが転がり始めると、あらゆる物が倒れたり、跳んだり、回ったり――軽快な音楽をバックに、次々と運動を生じさせる「ピタゴラ装置」。NHKEテレで放送されている「ピタゴラスイッチ」の代名詞とも言えるこのコーナーには、実は深い意味がある。

ピタゴラスイッチは、多種多様な短いコーナーで構成されており、進行役がいない。ピタゴラ装置は、「番組の進行役を映像で作ることはできないか」という発想で生まれた。短いコーナーの並びを、ピタゴラ装置が橋渡ししているのだ。

番組制作現場の中心にいるのは、環境情報学部の佐藤雅彦客員教授と、その門下生6人が立ち上げたクリエイティブグループ、「ユーフラテス」だ。

佐藤教授がSFCへ赴任し研究室を立ち上げたのは1‌9‌9‌9年。「大学に入るより難しかった」とユーフラテスの山本晃士ロバートさんは振り返る。佐藤教授らが考案したプレイステーションのゲーム「I.Q.」「I.Q. FINAL」が発売されて間もないタイミングだった。

佐藤教授から出される課題はどれも面白く、ゼミ生を常にやる気にさせた。課題制作のために、技術的なことは独学で少しずつ覚えたとユーフラテスの貝塚智子さんは言う。

山本さんは研究室での活動で大きな希望を見出した。「自分は元々絵を描くのが好きだったが、それでは勝てないと思っていた。でも、こうやって考えて作るやり方なら自分にも新しい表現が作れるかもしれない」

研究室が立ち上がって7年後、大きな転機が訪れた。佐藤教授の声かけにより「ユーフラテス」が発足した。与えられた問題を解くことから、問題を自分たちで見つけ、解決していくことへと意識が変わった。

面白いと思えるようなアイディアはいきなり降ってくる訳ではない。しかし研究室での活動を通してアイディアが思いつきやすくなったと山本さんは感じている。「研究室ではなぜ面白いのかをひたすら言語化することを試みました」。感覚的な面白さを分析した研究経験は、今も大きな強みとなっている。

「流行とは関係なく、自分が発見した面白さに向き合いなさい」。佐藤教授の言葉を今でも思い返すそうだ。発見した面白さは、潜在的に誰もが共有できる可能性を持っている。それにどうすれば気づかせることができるかが今の仕事だと山本さんと貝塚さんは語る。

ユーフラテスの作品の面白さは、視聴者が自身の想像力を使うからこそ感じられる。そうすることで、より理解が深くなり、心に引っかかりやすくなるという。

ユーフラテスは日常にある「面白い」を探し続けている。今日も、新しい「アイディア」が「作品」というゴールに向かって転がり始めているだろう。

(山本啓太)


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