教室の窓から外を眺めていると、東京タワーと目が合った。私たちの通う大学は、そんな東京らしい場所にある。

「平凡を許してくれない水槽で/どんな風に気持ち良く泳げたら」。昨年放送されたドラマ「東京タラレバ娘」の主題歌「TOKYO GIRL」は、東京で生きる苦悩と夢を追う姿を歌う。世界で一番人口が多いこの街で、大勢の中に埋もれてはいけないという強迫観念が私たちに生きづらさを感じさせる。

誰かと比べること、誰かに比べられること。偏差値のように数値で測れることも、人間力のように感覚的なこともある。誰かと比較しながら自分の立ち位置を探っていると、期待していたよりずっと平凡な自分に出会う。

今年、東京タワーは開業60周年の節目の年を迎える。高さの記録は抜かれ、電波塔としての役目も終えた。当初の独自性はとうに失われているが、それでもなお多くの観光客が訪れる。今となっては世界に数多ある塔のひとつだとしても、訪れる人々はその人の感覚でそこに魅力を見出す。

東京で生きることに疲れたら、新たな角度から自分を見直してみよう。平凡の向こう側にはきっと、気付いていなかっただけの魅力が眠っている。 (小宮山裕子)