【ART COLUMN】(映画) DRIES: ドリス・ヴァン・ノッテン 花とファブリックを愛する男

手軽に流行を取り入れられるファストファッションが主流の今日、一着の服を大切に使い続ける人が減ってきていないか。ベルギーのファッションデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンは、大量生産・大量消費の時代とは反対に、時代を超えた「タイムレス」な服を目指している。映画『DRIES:ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』では、多くのセレブリティに愛される唯一無二のブランド、「ドリス・ヴァン・ノッテン」のデザイナーに密着。究極の美を創り出すインスピレーションの源に迫る。
 
ドリス・ヴァン・ノッテンは1958年に既製服販売店の家に生まれた。アントウェルペン王立芸術学院を81年に卒業した後、フリーランスのデザイナーとしての仕事を続けつつ、オートクチュールコレクションを発表。コレクションは各国のバイヤーから高く評価され、現在ではメンズ・レディースコレクションを全世界で展開している。
 
大胆な花柄プリントや、エスニック調のデザインで知られるブランドであるが、デザイナー本人はそのように分類されることを嫌っている。自然や芸術作品などのあらゆるものが、彼にとっては同じように服を作るインスピレーション源となる。決して時代や地域といった区分に縛られていない。本作ではアントウェルペンの郊外にある彼の邸宅にまで密着し、庭園に咲き誇る花の手入れの様子や、菜園で採れた野菜を収穫している貴重な姿をみることができる。
 
どんなものに対しても同じ好奇心と情熱をもってみつめ、美しい物に囲まれて暮らす。そこからオリジナルの生地をつくり、彼が感じたことを具体的に服に落とし込むまでに十分な時間を費やす。この真摯に向き合う姿勢こそが彼の服を豊かにしている。一見相容れないよう色や要素を組み合わせた服のデザインを可能とするのは、この視点と姿勢だ。
 
また、彼が物事をこのような視点で見ているからこそ、ドリスの服は持ち主とともに成長できる「タイムレス」な服なのである。半年で寿命が尽きる虚しい「ファッション」ではなく、時が経っても色褪せず、数年後に振り返ると以前とは異なった着こなしができる。そんな「じっくり味わえる」服をデザインしている。
 
映画の最後で、94歳のファッショニスタ、アイリス・アプフェルは「今日、こんなにも情熱と知的さに溢れた、独特なデザイナーはドリスだけよ」と語っている。彼の才能、服作りへの姿勢にフォーカスした本作を見れば、このコメントが過大評価ではないことが納得できる。
 
ブランドの服はどのような工程を経て消費者に届けられているのか。「ドリス・ヴァン・ノッテン」に限らず、本作をきっかけに、自身が身につけているものを一度振り返ってみてはどうだろうか。2018年1月13日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。
(末吉遥)


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