慶應塾生新聞会 三田オフィス
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【塾生が、考える ー塾長選挙ー ③】専門家の眼から見た「塾長選」

坂井豊貴 経済学部教授
―複雑な制度 結果には一層の説明責任

―現行の塾長選出制度をどう評価するか

塾長候補者3名は、推薦委員会による「3名以内の連記または単記」の投票によって決められます。しかし、連記式では複数の候補者が過半数を獲得できません。単記式の過半数には「多数派の意見」という明瞭な意味があります。しかし、連記式だとそうではありません。

現行の塾長の選出制度は、集団的意思決定ルールの専門知に基づくものとは思えません。おそらく様々な観点を考慮して、しかし感覚ベースで、色々なステップを組み合わせることで作ったのでしょう。

その結果、かなり複雑な多段階ゲームとなっています。よくいうと大仰で、儀式的な演出効果のある制度です。宗教的でよいとの評価はありだと思います。

―今回の塾長選出の背景について、銓衡委員会は説明すべきか

集団的意思決定では、結果に反対の人を、服従させることになります。だから納得のための説明が非常に重要です。塾長選でいうと、銓衡委員会は、塾長選出の理由を説明すればいいと思います。これは議論を重んじた福澤の精神にもかなうでしょう。

文部科学省 高等教育局 大学振興課
―法改正で国立大学長の選考 透明化 私立大は“建学の精神”踏まえる

従来、大学運営において、各学部の教授会が力を持っているがために、学長は学内の既得権益に反して抜本的な改革を行うことができなかった。そこで、学長のリーダーシップを確立するため、文科省は近年、大学のガバナンス改革に取り組んできた。具体的にどのような法改正が行われたのか、文科省高等教育局大学振興課に取材した。

ガバナンス改革の目的は同じだが、国立大学と私立大学では、法的コントロールの度合いが大きく異なる。国立大学は、設置目的の法的性質や、運営費の多くが国からの公的支援により支えられていることから、法規制は私大に比べ厳しくなっている。一方、私立大学に対しては、原則「サポート・バット・ノー・コントロール」だと担当者は語る。国は、私学制度の趣旨に鑑み、それぞれの建学の精神を尊重し、必要最低限の規制を行うに留まるということだ。

大学ガバナンス改革の一環として2014年、学校教育法と国立大学法人法が一部改正された。国立大学を対象とした国立大学法人法では、学長選考の透明化などを図るための規定が定められた。例えば、学長を選考する上で設置が義務づけられている学長選考会議において選考基準を定めることや、同基準と選考結果を遅滞なく公開することなどが義務づけられた。

文科省は、同法改正の際に関係者向けに提出した通知(2014年8月)の中で、「大学が果たすべき社会的責任」について言及している。大学のステークホルダーとして、大学関係者のほか、保護者や卒業生、地域社会や各種団体・企業、さらには国民一般を挙げた上で、「学長が、教育研究評議会や経営協議会、理事会・評議員会、監事などの機関を有効に活用し(中略)自らの説明責任を果たし、透明性の高い大学運営を行」うよう要請する。

国立大学法人法改正の留意事項では、「学長又は機構長の選考の透明化」と題し、以下のことが記されていた。

「①学長等選考会議が定める基準には、学長又は機構長に求められる資質・能力、学長又は機構長の選考の手続・方法に関する具体的な事項が盛り込まれることが想定されること。②学長等選考会議は、候補者の推薦への関与、所信表明の機会の設定やヒアリングの実施、質問状の公開など適切な方法を通じて、主体的な選考を行うこと。③学長等選考会議の構成員については、審査の公正性等の観点にも配慮しつつ、多様なステークホルダーが参画するように努めること」

この法改正は、あくまで国立大学法人法の改正であり、私立大学は対象ではない。しかし同通知には、「私立大学においても、建学の精神を踏まえ、求めるべき学長像を具体化し、候補者のビジョンを確認した上で決定することは重要」とある。

文科省担当者は、私立大学の学長選考について「透明性が高いに越したことはないが、どこまで公開できるのかという限界は自ずと出てくる。学校法人自らが選考方法を再点検し、適任者を学長に選んでいただきたい」とコメントしている。