慶應塾生新聞会 三田オフィス
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「うつ」と向き合う 精神科医・大野裕氏に聞く

気分が沈みこんでいて、元気がないように見える。何事にも興味が湧かず、楽しそうでない。あなたの周りにもこのような人がいないだろうか。いる場合は注意してほしい。その人は「うつ」であるかもしれない。

「『うつ』とは気持ちが沈みこんでいる総体的な状態で、年齢は関係なく誰にでも起こること。『うつ』は集中力や判断力を低下させ、パフォーマンスを落とすほか、自殺の原因にもなりうる」。元慶大教授で、精神科医の大野裕さんはこのように語る。

著書『「うつ」を治す』の中で、大野さんは私たちの身近にある「うつ」とその治療法について著している。
 
そこにある記述がなかなか衝撃的である。日本人のうち、生涯にうつ病になる人はおよそ6‌%、つまり15人に1人であると言われている。このデータは「うつ」が私たちにとって、決して他人事ではないと示しているといえる。
 
大学はよく「海」に例えられる。膨大な範囲から自らのしたいことを選ぶよう強いられる機会が多いからだ。必然的に迷うことも多くなる。大学生の中には、迷い、苦悩することで「うつ」になる人も少なくはない。
 
知り合いに「うつ」の人がいた場合、私たちはどのように接してあげるべきなのであろうか。大野氏は次のように語る。「一つは無理をしないで見守ること。もう一つは一緒に何が問題かを考えてそれを解決するための手助けをすること。励まさないで、相手の気持ちに寄り添いながら話を聞くことがまず大事です」
 
「うつ」は現代社会を語るうえで欠かせない問題である。成果が重視され、集団内でも孤立と競争が激しい現代。SNSの影響でコミュニケーションギャップが起きやすい現代。このような時代背景は「うつ」の大きな要因である。「うつ」による悪影響は大きく、事実「うつ」を原因とする経済損失は年間4兆円を超すとも言われている。
 
しかし、「うつ」にあるのは負の側面だけなのであろうか。大野氏は、「うつ」はいろいろな心の問題が起きている可能性に気が付けるチャンスであると語る。落ち込み・不安・怒りなどのマイナス感情は私たちにとって心のアラームである。これらの感情に気づくことは問題を解決するために重要であるという。
 
悩んでいるとき、私たちはどうしても悪いほうに考えがちである。しかし、悩むことには次につながるヒントが隠されている。目の前の問題だけに縛られず、先を見る力が「うつ」と向き合う上で大切になってくるのではないだろうか。
(曽根智貴)