【ART COLUMN】Nulbarich (ナルバリッチ)

幸せとはいったい何なのか。誰しも一度は考えるテーマだろう。スポーツで試合に勝つ、社会的に成功を収める、愛する人と結婚する……。数え出せばきりがない。しかし幸せの形は数多く存在するが、自分自身が幸せと感じることを見つけるのは非常に難しい。

Nulbarich(ナルバリッチ)というバンドがいる。耳の早いリスナーは名前を耳にしたことがあるかもしれない。ブラックミュージックの強いビート感とグルーヴ感を特徴とする音楽をベースに、ソウルミュージックやロックの影響もみられる。Suchmosなどが音楽性としては近いかもしれない。日本語と英語が入り混じった歌詞を歌い、去年メジャーデビューを果たした。

ホンダ『GRACE』のCMに採用された楽曲「NEW ERA」。優しい歌声から始まり、飾りのない歌詞とメロディーで形作られた聴き心地の良い曲となっている。この曲のタイトルは和訳すれば「新しい時代」だ。しかしこの曲は挑戦を応援するというよりもただそっと背中を押してくれる。

Nulbarichの楽曲の特徴としてあげられるのは、やはり心地良いそのグルーヴだろう。そのメロディーは激しいロックでも、おとなしいバラードでもない。例えるならば、まるで日常をそのまま音楽にしたような、常にそれにいる、そんなイメージの音楽だ。「It’s Who We Are」を例にとると、独特のイントロから始まり、ノリの良いグルーヴを奏でている。通学途中の電車、家事の最中といった日常の1ページのBGMとして聞くのがいいだろう。いい意味で聞き流せる、そういった曲となっている。

Nulbarichの楽曲は日常のありふれた幸せを歌っているものが多い。「思い通りにいったら面白くない、気楽にいこうぜ」といったメッセージをリスナーに伝えてくれる。

日常の幸せを感じるのは難しい。なぜならそれは常にそばにあるために、気づくことが出来ないからだ。Nulbarichの楽曲はそんな小さいかもしれないが、確かに存在する幸せを歌っている。朝起きた時の太陽のきらめき。好きなハーモニーを鼻歌で奏でている時間。それらはなんてことはない、日常の一幕に過ぎないかもしれない。しかし、ふと目を向けて見ればそこにこそ何気ない発見があるのではないか。それを見つけることを幸せだと感じるかは人それぞれだが、そんな発見を与えてくれる音楽を発見するのは、間違いなく幸せだ。
(藤田龍太朗)


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