本井英 選

中空に 陣取つてをり 熊ん蜂

理3 稲垣秀俊

季題は「熊蜂」。春の季題です。夏にも秋にも「蜂」は見かけますが、春、我々の目に触れ始めた頃が一番印象的だからでしょう。「熊蜂」はずんぐりとした体型から、なんとなく怖ろしい感じもありますが、「スズメバチ」のような危険さはないようです。「中空に陣取つて」というのは「熊蜂」のホバリングの状態を写生したのでしょう。恋の相手を待って縄張りを主張しているところです。中空に浮いている「熊蜂」を見付けたら、小石を投げてご覧なさい。猛烈な勢いで追って来ますよ。

まくなぎを大きく払ふ腕かな

商学部 講師 高橋幸吉
「まくなぎ」は、極く細かい虫で、夏の夕方など、目の前にうるさく付きまとったりします。別名「めまとい」などとも言います。どこか木立の中の道をあるいていたら、突然細かい虫の群れが、作者を襲ったのでしょう。それを避けようと「大きく腕を」揮っている人物の姿がややユーモラスの描かれています。

知らぬ他人と話したくなるつつじかな

文1 沼あゆみ
季題は「つつじ」。漢字では「躑躅」、こちらの方がごちゃごちゃ咲く「つつじ」の気分が出ているかもしれません。桜の花が散って、やや汗ばむような晩春になると、随分と派手な色に咲きます。やや「庶民的」な「気さく」な、「つつじ」を見ていたら、なんとなく「他人(ひと)」と話してみたくなった、というのです。眼前の「つつじ」の様子から、作者の気分の引き出された、正直な句です。
長閑さや影を引きつれ遊びをり

文2 石原久珠子
季題は「長閑(のどか)」。春の季題です。春にか他にも「麗らか」と言った気分的な楽しい季題もあります。一日、のんびりと公園に行ったり、買い物をしたりして「遊んだ」のでしょう。そんな気儘な一日を一人ですごしたのですが、ふと自分の足許を見たら「影」が自分に寄り添っていた。その自分の「影」に少し愛しさを感じている作者。孤独とは違う「一人」を楽しんでいるのでしょう。

蝉しぐれ思ひ出多き三田の山

昭和34年法学部院卒 高橋彰夫

塾新編集長選

昨夏、三田を訪れた際に威勢の良い蝉の鳴き声を聞いたときの強烈なインパクトと御自身の三田への想い出深さが鮮明に描かれる。きっと、沢山の想い出がこの場に詰まっているのだろう。

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