慶應塾生新聞会 三田オフィス
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2‌0‌2‌0年施行予定 教育改革を考える

2‌0‌2‌0年に向けて、文部科学省(以下文科省)主導で大規模な教育改革が始動した。主に、文科省内の「高大接続システム改革会議」において教育方針が決定される。以下、慶大文学部長で教育学を専門とする松浦良充氏に話を聞いた。

改革の概要

今回の改革では、大学入試の形態が変更されるのみならず、高等学校や大学における教育も変化する。文科省内では、大学に関わる領域を扱う高等教育局と、高等学校に関わる領域を扱う初等中等教育局に分割されており、これまでは個々に改革が試みられてきた。しかし今回の改革は、両者が一体となって行われる。

改革の理由

まずは高等学校における教育について、改革が行われる理由が主に三つ挙げられる。
 
一つ目は、学力の三要素(①知識・技能、②思考力・判断力・表現力、③主体的に学ぶ意欲)を見直すためである。単なる知識・技能を身につけるだけでなく、この三要素を活用できなければならないというのが、今回の改革の主な趣旨だ。
 
二つ目は、グローバル社会で活躍できる人材を育成するためだ。他国と比較すると、日本の大学入試はいわゆる知識偏重に硬直しており、高等学校ではそれに合わせた形で教育が行われている。よって大学教育、大学入試、高等学校における教育という順番で根本的な部分から変えなければならない。
 
三つ目は、主体的に学ぶ姿勢を確立するためである。2015年の国際学力テスト(PISA)では、日本は科学的リテラシーの分野において、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で1位だ。しかし、生徒質問調査における「科学の楽しさ」、「理科学習に対する道具的な動機付け」、「理科学習者としての自己効力感」、「科学に関連する活動」の4つの項目全てで、OECD平均を大きく下回っている。このことから、日本人は科学の点数そのものは高いが、科学に興味を持つ人が少ないと考えられる。どの科目においても、主体的に学ぶ意欲を高めていくことが必要とされているのである。

難航する改革案

大学入試に代わる新しい案については難航している。現行の大学入試センター試験(以下センター試験)に代わる高等学校基礎学力テスト(仮称)では、従来の教科の枠組みにとらわれず、「言語」という科目を設定して英語と日本語(国語)の能力を同時に測ることが試みられた。
 
また、アメリカの入試形態のように、複数回受験のうちの最も成績が良いものを大学に提出するという案や、コンピューターを用いて出題するCBT(Computer Based Testing)を導入するといったような、様々な提案がなされた。
 
しかし、時間的な制約によりこれらの施策は実現には至っていない。

新しい入試形態

英語では、4技能(読む・書く・話す・聞く)を総合的に評価する形式に変化する。だが、これは現在のマーク方式に比べると採点するのが難しい。よって、TOEIC(Test of English for International Communication)やTOEFL(Test of English as a Foreign Language)、英検(実用英語技能検定)のような、外部の民間業者に委託するという提案がなされている。
 
また、国語では80~1‌2‌0字程度の記述問題、数学では解法を問う問題などが一部追加される。ただ、文科省の現段階の構想としては、大部分はマーク式のまま1点刻みの点数で評価し、さらに各大学の個別試験においては、思考力・判断力・表現力と主体的に学ぶ意欲を問う問題を出題するということだ。

慶大の今後は

では、慶大の教育はどう変わるのだろうか。新しい入試形態を採用するかの判断は、各学部に委ねられる。ただ、学力の三要素を見られる入試形態に変えることを文科省は期待している。
 
現在、全大学の入試形態は、一般入試、推薦入試、AO入試の三つに区分されている。しかし、教育改革が行われることにより三つの入試形態の区分けが曖昧になるだろう。例えば、思考力・判断力・表現力は現行のAO入試において学生に求められている。そのため、学生募集の区分も撤廃される可能性がある。
 
つまり、文科省の学習指導要領に沿って教育を行うか否かで慶大の教育方針も変わってくるのであり、今後の展開が注目される。