沖縄本島の南西に位置する宮古列島の一つ、宮古島。青い空に豊かな海が広がり、美しいビーチが数多くあるリゾート地として人気の高い島だ。そんな宮古島には海だけではなく、大野山林という森林があることをご存じだろうか。
 
大野山林は森林率が約16パーセントと低い宮古島において唯一の森で、国の天然記念物や希少な植物などが多く生息している貴重な森林だ。宮古の方言で「大きい」という意味がある「うぷに」という言葉から「うぷにやま」と呼ばれることもあり、地元の人がウォーキングをしたり、小中学生が自然学習をしたりする場となっている。
 
また、日本有数の野鳥観察のスポットとしても知られており、島内だけでなく、島外からもたくさんの野鳥愛好家や写真愛好家が訪れる。大野山林ではアカショウビンやサンコウチョウ、国の天然記念物に指定されているキンバトなどを高い確率で観察することができる。実際に今回、宮古野鳥の会の仲地邦博さんに大野山林の案内をしてもらった際も、至近距離でキンバトを観察することができた。規模が小さく、狭いため一極に集中して貴重な鳥がおり、観察しやすいのだという。
 
価値ある自然が広がる大野山林だが、課題もある。一つは外来種の繁殖により、元からいた生物が減少していることだ。特にインドクジャクによる被害は大きく、ヘビやカエルが少なくなったり、一時は農作物が荒らされたりといったことが問題となった。クジャクの繁殖は、元をたどると学校などで飼育されていたクジャクが脱走したことがきっかけと考えられている。
 
また、野鳥の水のみ場となる人工池の劣化が激しく、枯渇しているという問題もある。大野山林に3つある池のうちの一つ、竜の池は2年前に修復されたが、残りの2つは宮古野鳥の会や宮古青少年の家などの団体が要請しているものの、未だに修復されていない。池は野鳥が集まるポイントであり、野鳥観察に訪れる人も多いが、竜の池の修復前には野鳥の姿も少なくなってしまっていたという。その他にも地元住民によるごみの投棄や、野鳥の観察に訪れる人のマナーの問題などもある。
 
大野山林の中にある教育施設、宮古青少年の家のスタッフである奥間郁子さんは、「住人である私たちが大野山林の現状をあまり知らないのが課題だ」と話す。昔は薪や野草、木の実などを入手しに来ることもあったが、今の若い世代は学校の課外学習で初めて訪れる人も多いという。次世代の子供たちに、宮古島の自然は豊かだということを伝えることが重要だと語る。
 
大野山林に限らず、私たちが自然に触れる機会は着実に減っている。そして自然に対する正しい知識がないことこそ、自然が失われていく要因の一つだ。貴重な生物たちの姿をこれからも残していくためにはまず、自然を守り、次世代につなぐために活動する人々の思いを積極的に知ろうとすることが大切なのではないだろうか。
(竹内未月)