「健康で長生きしたい」という願いは誰もが持っていることだろう。腸内細菌を増やすことで健康長寿につながる可能性があるということが、最新の遺伝子解析により分かってきた。生活のなかで具体的に意識すべきことは何か、腸内細菌に詳しい慶大医学部腎臓内分泌代謝内科教授の伊藤裕氏に話を聞いた。

人間の細胞の数は60兆だが、われわれの腸の中にはそれよりも多い100兆個もの腸内細菌がすんでおり、大きな意味で共生関係にある。腸内細菌が「お花畑(フローラ)」のように群生している様子を「腸内フローラ」と呼んでいる。

腸内細菌は人それぞれ異なり、個人を特定できる指紋のようなものだ。病気や肥満になりやすい体質かどうかを決定する要素であり、出生時に母親から譲り受けた後大きく変化することはない。ところが生活習慣、とくに食生活を見直せば、体内にすむ腸内細菌を少し変えることができ、病気になりにくい体質になれるという。

腸内フローラを意識すると、どのような食事が理想的なのだろうか。「一言でいえば、和食が良い」と伊藤氏は指摘する。

献立にバラエティーを持たせることが基本であり、和食であれば、自然と品数が多くなるという。
メニューでは、食物繊維が豊富な野菜を取り入れること。伊藤教授は「これだけ飽食の時代になっても、食物繊維は足りていない」と警鐘を鳴らす。特にゴボウ、大根、ニンジンなどの根菜類は食物繊維が多く、腸内細菌のエサとなる。

味噌や醤油などの発酵食品は細菌の力を使って加工しており、腸内細菌に良い影響を与えるため積極的にとりたい。また動物性のタンパク質は悪玉菌を増やすため、摂りすぎないよう、魚を中心とした食事が好ましい。油分の多いメニューも避けるべきだという。和食であれば、これらの条件をすべて満たすことができる。
規則正しく食べるということも大切だ。一日2食なら2食、3食なら3食を一定のリズムをもって食べるようにして、間食はなるべく避けるようにしよう。
 
腸を休めるために、睡眠時間も十分に必要だという。4時間ほどしか寝られないと、腸内細菌が乱れるという報告があるそうだ。また大体決まった時間に睡眠をとるほうがよい。消化を考えると、就寝の2~3時間前までに夕食を終えておくのが理想的だ。

適度な運動も腸内フローラを健康に保つうえで重要となる。1日30分ほどのウォーキングが良いともいわれるが、時間が取れない場合は週一回の筋力トレーニングでも構わない。運動は思い立ったときにやるというよりも、習慣づけることがポイントだ。

腸内フローラを改善するには、食生活を中心に睡眠や運動も含めて規則的な生活を送ることが重要となる。大学生の今から生活習慣に気を付けていれば、健康長寿の夢は大いに実現可能なのではないか。
(原科有里)