テレビや雑誌、ネット上にある写真の隅に「写真・アフロ」という表記を見たことがないだろうか。言われてみればよく見る、と思うと同時に「アフロ」って何者だ、と疑問を抱く方が多いだろう。意外に思われるかもしれないが、アフロは1‌9‌8‌0年に設立された日本企業であり、本社を三田キャンパスからほど近い東京・築地に構える。いったいどのような企業であるのか。その正体を株式会社アフロの代表取締役、またプロカメラマンでもある青木紘二氏に聞いた。

 

アフロの正体は、写真や動画をテレビや広告、ウェブ記事、雑誌、教科書など様々な方面に有償で提供する事業を主とするフォトエージェンシーだ。提供する写真の種類はニュース、スポーツ、エンタメなど多岐にわたり、どの分野においても質の高い写真を提供している。

「若い頃から商売をやりたいと思っていて、やるならば写真関係で」と自分のやりたいことを実現するべくアフロを設立した青木氏。設立当初は社員2名の小さな企業であったが、今では世界中の多種多様な写真をあらゆる方面へ提供する企業に成長を遂げている。その背景には青木氏が今までに広めてきた人脈がある。

アフロを設立後もプロカメラマンとして世界で活動する中で、現地で出会う優秀なカメラマンに対し「自社に写真を預けてくれないか」とスカウトし続けたそうだ。その結果、世界中に人脈が広がり、多くの優秀なカメラマンを自社で抱えられたのである。




写真提供をする姿勢もまた、抱えるカメラマンを増やすきっかけとなった。アフロでは写真を顧客に販売する際に、自社カメラマン、契約カメラマン、海外エージェントの写真を一斉に見せ、その中で顧客が一番気に入った写真を提供している。もちろん、自社カメラマン以外のカメラマンが撮った写真が売れてしまえば利益は減ってしまうが、気にしないという姿勢だ。

この姿勢でカメラマンの信頼を得たことも相まって、今では自社カメラマンの他に、国内外で数千人のカメラマンと契約している。さらには世界最大規模の通信社であるAP通信とロイター通信とも提携し、提供できる写真をさらに増やしている。こうしたつながりが人員と機動力を確保し、多方面への写真提供を可能にする秘密のようだ。




アフロの事業は単なる写真提供だけに留まらない。出版社に自社の写真を用いた新たな企画の提案や年賀状の作成などを行っている。さらには、海外とのつながりの深さや今までの実績からオリンピックの公式フォトエージェンシーとして競技撮影の中心を担う。

「利益を求め過ぎず、楽しく仕事すること」と青木氏は言う。この仕事観が「アフロ」の表記を至る所で目にするようになった理由でもあろう。何気なく目に付く「アフロ」の裏には、写真界随一の企業の姿があった。

 

(藤咲智也)