東京六大学野球春季リーグは28日、最終週2回戦が神宮球場で行われ、慶大は早大に敗れて6季ぶりの優勝を逃した。

試合はシーソーゲームとなったが、慶大が6-5と1点リードする7回、早大が打者一巡の猛攻で一挙5点を奪い逆転。終盤の失点が響き、結果は12-6。慶大は優勝へあと一歩のところで涙をのんだ。

これにより、立大が慶大を勝率で上回り18年ぶり13回目、今世紀リーグ初制覇が決まった。

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春季リーグ優勝まであと一勝遠く

(6月号:追記)
東京六大学野球春季リーグは先月29日に閉幕し、慶大は1位・立大に惜しくも勝率で及ばず、2位でシーズンを終えた。立大のリーグ優勝は35季ぶり13度目で、今世紀初。6季ぶりの優勝へあと1勝と迫っていた慶大は、今季チームの屋台骨を担ってきた投手陣が最後に崩れた。

神宮球場に無情のサイレンが鳴り響く。いよいよ現実味を帯びていたリーグ優勝への期待は、たった一つの黒星で打ち砕かれた。

第6週を終えてもなお、5校に優勝可能性が残されるという異例の大混戦となった今季の六大学野球。前半戦では、関根(環1)、髙橋佑(環2)ら投手陣の飛躍で勝ち点2を挙げた慶大が首位に立った。

打線が温まると、徹底的に相手投手を攻略する。毎試合、異なる選手が見せ場を作り、調子が上向きでない選手の役割を補う。6試合を終え、打線にも流れが生まれ始めていた。この点で立大戦は今季のターニングポイントだったと言える.

しかし、投打はそう簡単には噛み合わない。第5週では、大久保監督が「野球センスのかたまり」と警戒する法大と対決。慶大打線は残塁が多く、流れを引き寄せられない。ベンチは継投策に入るが、マウンドを託された関根、菊地(政3)らが粘れず。法大の4番・中山を中心とするテンポのいい攻撃を前に屈し、このカードを落とした。

敗戦にも明るい材料はあった。4試合で中継ぎとして登板し、8回を投げて自責点1と好投を続けていた髙橋亮(総2)が、リーグ戦自己最長となる5回を投げ、法大打線を零封。この髙橋亮の活躍が、続く明大戦での鍵となる。

今季の慶大は、決して順当に勝ち点を積み上げていったわけではない。投手のみでも、打者のみの力量でもなく、「チーム力」という歯車が噛み合って初めて勝利が見える。それを最もよく表していたのが、明大1回戦だった。打っては、瀬尾(理4)が四球、野選、適時打とそれぞれ絶好の場面で出塁。「四球でもエラーでもいい。どんな形でも出塁したかった」とつなぎの意識で5得点全てに絡んだ。

投手陣は明大を3失点に抑えた髙橋佑、菊地のリレーに続き、髙橋亮が登板。3回を投げて無失点で試合を締め、リーグ戦初勝利を挙げた。まさに監督が理想とする「5得点3失点以内」の試合展開で貴重な三つ目の勝ち点を掴んだ慶大。上げ潮ムードで早慶戦に臨むこととなる。

優勝への条件は、2連勝。慶大にとって絶対に負けられない戦いとなった早大1回戦では、清水翔(総4)、柳町(商2)がそれぞれ「最高の感触だった」「狙っていた」と振り返る2本の満塁弾で劇的な逆転勝利を演出。投げては、先発・髙橋佑が6回を被安打1に抑える粘投を見せる。しかし、7回には制球が定まらなくなる悪い癖に苦しみ、ビッグイニングの契機を与えてしまうなど、課題を残した。

優勝へのマジック1が点灯したものの、打撃好調の陰で投打の噛み合わせに不安が残る慶大。優勝がかかった翌2回戦で、不安は現実となる。早大の3番・佐藤晋を起点とした勢いある打線を止められず、菊地、髙橋亮という今季盤石ぶりを見せてきた投手陣が打ち込まれる。

打線は2度逆転に成功するが、終盤に大量7失点を浴びたところで力尽きた。賜杯を目の前までたぐり寄せていた慶大ナインだったが、「負けたら終わり」の一戦で惜しくも手放してしまった。

どんな歯車にも、時に狂いが生じる。そのわずかな狂いが生じたのが、優勝がかかった早大戦だった。しかし、観客までもがこれほど悔しい気持ちにさせられる早慶戦は久々だったのではないだろうか。優勝は逃したが、今季の慶大の戦い方は「強い慶應」の再来を予感させるものだった。

1シーズンを通して、チームとして「つなぎ、粘る野球」を体得した慶大。マスクをかぶる郡司(環2)も「勝つごとに本当に良いチームになってきている」と目を細める。夏を越え、チーム力を強固にして、真の陸の王者へと返り咲いてほしい。
(広瀬航太郎)

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