インターネットのある生活。私たちは机上で、手のひらの上で、世界の動きを眺めることができる。しかしその利便性ゆえに、知らず知らずのうちにユーザー自らが関心を寄せる情報、共感する論調ばかりを過剰摂取してしまうのが、インターネットの怖さでもある。

情報環境はいかにして健全に保たれ、また消費者は情報にどう向き合うべきなのか。最高で月間1‌5‌0億ものアクセス数を集める、日本最大級のインターネットニュース配信サービス、ヤフー・ニュースのニューストピックス編集部にそのヒントを探った。

ヤフー・ニュースでは、毎日、契約媒体から配信される4‌0‌0‌0本あまりの記事から、80‌~‌1‌0‌0本を「トピックス」として掲出する。その選定基準となるのが、「公共性」と「社会的関心」だ。
 
スポーツや芸能など注目度の高い記事を扱い、幅広い世代に開かれた情報環境を整える。その上で、政治や経済など「堅め」のジャンルであっても、伝えるべきニュースは細大もらさず伝える。配信記事を届ける立場から、ユーザーがバランスよくそれらを摂取できるよう配慮し、トピックスを編成している。
 
トピックスに採用された記事には、端的かつ読み手の関心を引くような13文字の見出しがつけられ、記事の理解を助けるための経緯をまとめた関連記事や語句説明などをパッケージにして提供している。編集部の苅田伸宏さんは、「インターネットニュースではタイトルが決定的に重要」であると語る。「見出しの脇に記事がある紙媒体と異なり、インターネットニュースはクリックされなければ見出しで完結してしまう」。それでも、誇大表現で記事内容との落差を設けることはしない。見出し作成の鉄則だ。
 
また個々の報道をそしゃくできていたとしても、ニュースの一続きの流れを理解していなければ、断片的な情報が一人歩きを始め事象に対する誤った理解へ繋がりかねない。そこで、編集部が今、注力しているのがヤフー・ニュースアプリの「あのニュースどうなった?」という機能である。
 
膨大な情報が交錯するインターネットメディアの場では、人々がニュースの全容に盲目とならないような工夫が必要とされてきた。ヤフー・ニュースが擁する編集力を最大限に活かしたこの機能は、一つの話題に対して関連する報道を時系列で表示するというものだ。 ユーザーがニュースの行方を追いやすくなるよう、点として散らばっている情報を線で繋いで見せる「交通整理」の役割を担う。
 
しかし、これらはユーザーがニュースへの理解を深める一助にすぎない。苅田さんは、情報の消費者自身が主体的に視野を広げるような情報摂取の必要性を訴える。
 
「異質な意見にも耳を傾けなければ、他者に対して不寛容な価値観が形成されてしまう。自分の関心のあるものだけを消費するのではなく、その幅を広げるような発見が重要と考えます」
 
今、自分の手のひらにある世界が全てと考えるのか。それとも、その手から滑り落ちていく情報を拾い集めるのか。情報社会の地平線は、私たち消費者の選択次第で無限の広がりを見せる。
(広瀬航太郎)