ラグビーの春の早慶戦は六月十一日、新潟スタジアムで開催され、慶大蹴球部が40―14で早大に勝利した。慶大が早大から白星を奪ったのは、01年5月以来5年ぶり。

 試合は序盤、早大が押し気味に試合を進めた。しかし前半25分、ゴール前でのラックからボールを受けたWTB山田がトライを決めると、以後は慶大が流れを掴む。5点差のまま前半を終えると、後半は慶大の一方的な展開になり、終わってみれば26点差の完勝だった。

 曇り空のビッグスワンのピッチ上を、背番号14のタイガージャージが躍動した。早大が、代表戦などでCTB今村ら主力7人を欠く中、この日の新潟スタジアムの主役になったのは慶大のWTB山田だった。

 『山田劇場』の幕開けは前半25分。ゴール際でのスクラムから右に展開されたボールを受けると、そのまま先制点となるトライを決めた。それまでは完全に慶大は劣勢。このトライで、チームがそれまでとは別物のように勢いに乗った。FB小田が、山田とは逆サイドのWTB出雲が、一気呵成にトライを奪う。山田自身も、さらにもう二つの同じような形でのトライを決め、慶大の金星に大きく貢献した。「試合前に3トライ以上すると宣言していた。目標が達成できてうれしい」。松永監督も、「大したものだ」と満足げだった。

 慶大の中での実力・実績は群を抜いている。一年次からSOとしてレギュラー出場。去年の春から秋にかけては豪州に留学し、本場のラグビーを吸収してきた。去年のクリスマス、大学選手権で実現した早慶戦では試合終了間際にトライを決め、その存在感を際立たせている。今年に入ると4月末から行われたU―23日本代表のニュージーランド遠征に帯同。FBとして現地の同世代の選手相手にプレーし、将来のオールブラックスの力を肌で感じてきた。

 だがこの遠征中に右ヒザを負傷し、慶大に戻ってきた後は試合に出場できなかった。ようやくの復帰戦となったのが、過去苦渋を舐め続けてきた早慶戦。チームは先の明大戦や同大戦に敗れており、期するものがあった。「今日は内容も結果も良かった。次に繋がる」。

 ベストメンバーではないものの、2月にトップリーグのトヨタ自動車を下した早大からの勝利。チームにも山田にも、アカクロの背中がはっきりと視界に入った新潟遠征だった。 

(羽原隆森)

 大量に主力欠き早大痛恨の大敗
 二季連続で学生日本一となっていた早大が、慶大にあっけなく敗れた。この日はディフェンスでミスを連発し、攻撃面でもパスの受け渡しすらままならない面が多く見られた。代表戦などで主力7人を欠いていたとは言え、ここ最近は実力差を見せ続けていたライバルから喫した、よもやの黒星。清宮前監督からバトンを受けた就任一年目の中竹監督は「層の薄さが出た。流れを変えるプレーヤーが今日はいなかった。慶大のディフェンスが良かった」と、淡々と語っていた。