慶大公認団体S.A.L.は、バングラデシュとの共同プロジェクト「To2bag」のイベントを、今月12日、新宿にある学生フリースペース「賢者屋」にて主催する。トートバッグを通じた「To2bag」とはどのようなプロジェクトなのか。プロジェクトチーフである植松美里さん(法2)を尋ねた。

S.A.L.は、国際問題に興味のない学生が、少しでも世界の出来事に関心を持ち、問題解決に貢献できる機会を増やすことを目的として2008年より活動している。主な活動内容は、国際問題についてのフリーペーパーの発行やイベント開催などだ。サークル内で複数のグループに分かれ、各々のプロジェクトに取り組む。

そのプロジェクトのひとつが「To2bag」である。「To Bangladesh To Japan」という意味を持つこの企画は、今年で5年目を迎える。「バングラデシュの工場で製造されたトートバッグを日本人が購入することで、バングラデシュの人々の雇用機会を増やせます。そして雇用者は、彼らが家族と暮らすのに充分な給料を受け取れます」と植松さんは語る。

一見シンプルなデザインに見受けられるが、そこに込められた意味は深い。例えば、トートバッグと共に販売されている、真っ赤なハート型をした「To2ポーチ」は、両国の国旗に共通する赤い丸をコンセプトにデザインされている。

植松さんは、「このプロジェクトが始まった背景には、バングラデシュの粗悪な労働環境があります」と話す。雇い主による労働者への賃金未納や、労働者を名前ではなく番号で呼び、勤務を拒んだ者には暴行を加えるといった実態は現在の日本の一般的な労働環境と比べると遥かに劣悪だ。

「To2bag」のプロジェクトメンバーは、Skypeでバングラデシュの人々とコンタクトを取って企画を進めており、時には現地の工場へ自ら足を運び視察している。工場では雇用者に正当な賃金を支払えるように整備し、また残業を極力発生させないようにするといった、バングラデシュの労働環境改善のための工夫を施している。

今月のイベントでは、心のこもった商品が並べられ、トートバッグのオリジナルアレンジや服飾業界の労働問題を取り扱った映画の上映が予定されている。またそれらの商品は「To2bag」のHPで常時購入できる。

児童労働、過酷な労働環境、難民問題、民族紛争などひとくくりに国際問題と言っても、例をあげると枚挙に暇がない。「トートバッグの購入を通して国際問題の解決に貢献できるので、多くの方に手に取っていただきたいです」と語った植松さん。S.A.L.の熱心な活動はこれからも続いていく。
(三谷美央)