2017年7月23日

慶應塾生新聞会 三田オフィス
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喊声 2017年2月号

世界は言葉で溢れている。消滅していく言葉がある一方で、多くの言葉が生まれ、使われていく。メディアから言葉を通して情報を得、家族や友人らと会話を交わす。私たちは言葉とともに生きている。

20世紀前半に活躍した哲学者のウィトゲンシュタインは言った。「私の言語の限界が私の世界の限界を意味する」。我々人間は言語をもとに世界を見て思考している。虹が7色に見えるのは、日本語に赤橙黄緑青藍紫という色を表す言葉があるからであり、色を表す言葉の少ない国では、虹は3色や4色に見えるという。雨を表現する言葉も同じだ。日本語には霧雨やにわか雨など、雨を表す言葉が多く存在し、季節によっても異なる。言葉を知っているから、雨を見て違いがわかる。表現する言葉を知っているだけで、ものの見え方が変わるのだ。言葉だけでなく経験によっても、世界の見え方は変わってくる。

大学生は自由だ。行動を遮るものはない。しかし、我々は行動に出ることを躊躇うことがある。遮るものがあるとすれば、それは不確実な未来への不安だ。不安が我々を委縮させる。

今これを読んでいる受験生は不安の真っただ中にいるだろう。桜が咲くことを祈りながらも、4月からの生活はまだ見えない。大学生も同じだ。大学卒業後の生活は想像もつかない。しかし、その場にうずくまっていては何も始まらない。立ち上がり、行動しなければならない。絵画や映画、旅先での出会いや見た風景。言語だけでなく、見聞きして感じたもの全てが私たちの世界の限界を広げてくれる。目の前には新たな世界が見えてくるはずだ。
(井上知秋)