慶應塾生新聞会 三田オフィス
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【論説】問われる「人間の価値」

圧倒的な成長を遂げている人工知能は多分野で活躍を見せ、世間を大いに盛り上げている。本連載『人工知能の行方』では、全9回にわたり実用化が進むAIに注目し、社会は人工知能とどう関わっていけばいいのかを考える場を提供した。

人工知能の研究開発は1‌9‌5‌6年に始まり、2‌0‌1‌6年でちょうど還暦を迎えた。その開発は順調ではなく低迷期を何度も経験したが、2‌0‌1‌1年から今に続く第3次AIブームはディープラーニングの研究を伴い、今までとは一線を画している。

華々しい技術進歩は、かつては夢物語と考えられてきた世界を次々に実現させている。しかし一概にその成果を賞賛するわけにはいかない。例えば、本連載で取り上げた自動運転車「ロボットタクシー」。技術者たちは、自らが作ったものが人々の生活を変えるかもしれないという高揚感から次から次に面白いものを生み出そうとしている。一方で、新技術の実用には法整備など社会的問題も生じ、AIを制御せよと言う人もいる。AIが創り出す新たな価値に、人間がどこまで制約をかけるか、その判断は難しい。

また、人工知能と雇用の問題を描いた連載からは、これからの社会のリーダー像が見えてきた。色々な業種で人間の職が奪われる懸念がある中、考えなければならないことは、どうやってAIを使いこなしていくのかということだ。膨大なデータ処理を得意とするAIと感性や発想力などに優れる人間。両者の強みをうまく使い分けるマネジメント力を持った人が時代を牽引していくに違いない。

人工知能は私たちのワークスタイル、ライフスタイル自体を変えていく。しかし忘れてはいけないことは、AIが未来を作るのではなく、人間が未来を作るということだ。人間がやってきたことがAIに取って代わられる。そんな時代だからこそ、人間が行動することに対する本質的な価値は何かを探りたい。自分は一人の人間として何ができるのか、どんな価値を持っているのか、今一度考えておきたい。「人間の価値とは何か」。人工知能の台頭は大きなテーマを私たちに突き付けている。