東京六大学野球春季リーグ戦は五月三十日、全日程を終了した。慶大は第六週の明大戦にて勝ち点を挙げ、この時点で優勝へ望みを繋げた。しかし翌週、法大が明大に連勝し、早慶戦を前に優勝を決めた。その後、慶大は最終第八週に早大に惜しくも敗れ、勝ち点3の三位でリーグ戦を終えている。

 なお、開幕戦となった慶立一回戦でサヨナラ打を放つなどして活躍した瀧口智洋二塁手(政四)が、チームから唯一ベストナインに選ばれている。

 ▼慶明第一戦 ○
 【慶大9―3明大】
 一回に3得点と序盤から慶大ペース。三回には主将・金森宏(環四)が2ラン本塁打を決め、一気に明大を突き放した。五回にも2点を加え、慶大の快勝で試合は終了。猛打に加え、「勝負しろ。思い切っていけ」という監督の声にしっかり応えた加藤(環三)の好投が光った。3失点はしたが、安定したピッチングで完投し、見事勝利に貢献した。金森主将はこの日大活躍をみせた自信のバッティングについて、「フォームをもとに戻したことで良くなった」と振り返り、「目の前の一試合に集中して、絶対に勝つという気持ちでいく」と勝利への思いを言葉にした。相場監督は「(大量リードは)予想していなかった。(今日のように)打たなきゃ勝てない」と次の試合を見据え、真剣なまなざしで語った。

 ▼慶明第二戦 ●
 【慶大4―6明大】
 前日の大勝でこのまま連勝したい慶大だったが、この日は明大の継投を前に敗れた。
 試合は序盤から明大ペース。初回、行田と佐々木のタイムリーで2点を先制する。慶大は三回に1点を返したが、四回に先発・守口(商三)が制球を乱して満塁のピンチを与えると、代わった中根が大久保にタイムリーを許し、さらに2点を奪われてしまう。流れに乗った明大は、その後さらに2点を追加。守っては久米と水田の継投で慶大の反撃を凌ぎきった。明大の試合巧者ぶりが際立った試合だった。

 ▼慶明第三戦 ○
 【慶大4―3明大】
 両チームのタイで迎えた三戦目は手に汗握る展開の試合となった。
 0―0の六回、慶大は金森宏の三塁打などで4点を先制。だがその裏、先発加藤が今浪に2ランを浴びてしまう。七回途中から登板の中根も常にランナーを背負う苦しい投球で、慶大は流れを掴みきれない。八回には代打清水にタイムリーを許し、1点差に迫られる展開に。しかし、九回も一死二塁のピンチを迎えながら中根が後続を断ち、慶大が辛くも逃げ切った。
 慶大は勝ち点3とし、僅かに可能性を残していた優勝戦線にこの時点で踏みとどまった。
 相場監督「ラッキーもあった試合だったが、選手がよくしのいだ。(今後は)チームの力を上げて、早慶戦に臨みたい」

 ▼慶早第一戦 ●
 【慶大0―3早大】
 雨天のため一日遅れた早慶戦初戦。多くの期待の目がむけられる中、勝利を手にしたのは早大だった。
 一回に2失点した慶大は、打線がうまくつながらず、三回にもさらに1点を失った。六回に満塁の逆転チャンスも訪れたが、あと一本が出ず、九回の佐藤翔(総三)の二塁打も得点に結びつかなかった。安打の数では早大を上回ったものの、完投の早大宮本の前に慶大は無得点。「打線が最後まで打てず、反撃の糸口さえつかめなかった」と相場監督がコメントするように、試合は早稲田の完封勝利だった。
 金森主将は「細かいミスをすると相手に流れがいってしまうので気をつけていたが…」と悔しさをにじませ、第二戦について「(気持ちを)切り替えて臨みたい。『絶対に勝つんだ!』という気持ちを今日以上に持って行きたい」と力強く語った。

 ▼慶早第二戦 ○
 【慶大7―6早大】
 まさに『打倒早稲田』を合言葉にチーム一丸でもぎとった勝利だった。初回に3点を取られ、苦しい展開。前日は完封され、活躍を見せなかった慶大打線だが、今季絶対的な安定感を誇っている早大、右のエース大谷や中継ぎ陣を打ち崩し、逆転。九回、追いつかれるものの、延長十回、無死満塁のチャンスを作る。「次に繋ぐ意識で。内野フライが最悪のパターンだと思っていたから、ストレートを強く叩こうと。低目を狙っていった」。打席に入った松橋(総三)が中前サヨナラヒットを打ち、昨日先発の加藤まで出す総力戦を制した。  
 試合後、相場監督は、「粘りのある試合だった」と選手たちを称え、さらに殊勲打を放った松橋には「結果を恐れず、思い切って行け(と送り出した)」とサヨナラの場面を振り返った。次の日の試合に向けて「総力戦で戦う」と意気込みを語ってくれた。

 ▼慶早第三戦 ●
 【慶大2―8早大】
 1勝1敗のタイで迎えた、宿敵・早大との第三戦。昨日の勝利を無にしないためにも、負けられない試合である。
 先発・加藤は初回に3点を献上するものの、その後は連投の疲れを感じさせない投球で早大に追加点を許さない。打線は中盤まで宮本を打ちあぐねていたが、六回に「調子が上がってきた」という岡崎(総四)のタイムリーでまず1点。さらに八回、ルーキー・松尾卓(環一)の大学初安打がタイムリー二塁打となり、早大に1点差まで迫った。
 だがその裏、それまで粘りを見せていた加藤が早大打線についに捕まり、この回だけで5失点。九回の攻撃も、早大三番手・大谷に封じられ、慶大は元気なく今季最終戦を落とした。
 監督として初のシーズンを終えた相場監督「早大との差は、投手が三戦とも初回で失点してしまった所にある。打線も粘れていない。勝負所でどうやって点を取るかが大事だと感じた」