昨季終了後に慶大野球部の監督に就任した相場勤氏は、10年近く六大学の審判を務めてきたという異色のキャリアを持つ。「審判は、一歩引いて試合を見なければならない存在。試合の流れを掴むという意味では、審判をしてきた事は監督にも役立つと思います」と話す。

 監督就任後、最初に選手達を相手に語った事は、「野球はルールブックがあるからこそ競技として成り立っている。だから、ちゃんとルールを守りなさい」。いかにも審判経験者らしい発言だ。

 審判の経歴も持つ一方で、現役時代は六大学の花形選手だった。3打席連続ホームランの六大学記録を持ち、慶大に在学中の86年にはアマチュア選手による日本代表に選出された経験もある。

 しかし、そんな中現役部員として六大学を戦っていた四年春のシーズンのことだった。「勝てば優勝の早慶戦で、早大を9回2アウト2ナッシングまで追い込んでおきながら、そこで打たれて逆転負け。その時優勝できなかったのは、やっぱり悔しかった」。だからこそ、現役の部員達には「神宮で優勝して欲しい」という。

 今季主将となった金森宏は「始めはクールな印象だったが、すごくチームや選手の事を考えてくれている。熱い方ですね」と話す。情熱的な『相場イズム』は、既にチームにも浸透しているようである。

 インタビューの最後に、塾生らへのメッセージを貰った。「部員には一般の学生と交流して欲しい。一般の学生も、体育会部員である彼らが同じ学生だという感覚を持って欲しい。その感覚が拡がっていって、どんどん塾生には神宮に来て頂きたいですね。そうすればこちらも(気持ちが引き締まって)だらしないプレーはできなくなりますから」。伝統の慶大野球部の監督として、改めて気持ちを引き締めている様子を見て取れた。

 果たして審判同様、監督としても名采配は見られるか。熱い思いをたぎらせながら、相場監督の最初のシーズンがいよいよ幕を上げる。