映画評 『花とアリス』(2‌0‌0‌4)

誰もが経験する思春期、青春。私たちのそれはどのようなものだっただろうか。『花とアリス』(2‌0‌0‌4)は、大人になってから気づかされる、見慣れた日常の中の大切な瞬間が詰まった作品である。

花(鈴木杏)とアリス(蒼井優)はいつも一緒で気の置けない親友。ある日、花は一目惚れした先輩・宮本(郭智博)がフェンスに頭を打ち倒れた際に、「先輩、記憶喪失ですよ」と言い、嘘をつく。その嘘はアリスを巻き込み、奇妙な三角関係が動き始める……。

物語にはたくさんの嘘が登場する。花とアリスは嘘がばれないように嘘を重ね、アリスの母や花の落語部の先輩もまた嘘をつく。宮本がアリスに「全部嘘?」と問うシーンは、この物語そのものが「全部嘘」であるという暗示かのようにも思えてくる。

ところが、アリスと宮本のデートではアリスと父親の思い出が蘇り、父親を想う彼女の本心が垣間見える。そして、花とアリスと宮本の嘘で繋がった関係も徐々に変化し、真実が生まれる。

この作品を語るにあたり、特筆すべき点は主人公たちから溢れ出す「輝き」である。容姿の美しさを指しているのではない。役者自身が持つ「少女の輝き」である。主演を務めた二人の撮影時の年齢は16歳前後。花とアリスの年齢とほぼ重なる。痛々しいほど純粋な少女たちの姿は凶暴なほどの眩しさを放つ。

映像の美しさも目を引く。アリスがバレエを踊るラストシーンはもちろんのこと、写真部の友人が花とアリスが戯れる様子を撮るシーンも圧巻の美しさである。思春期の少女たちの輝き。それは儚く切ない。

この作品を映像の美しさだけが目立つ、雰囲気だけの映画と取る人がいるかもしれない。しかし、この作品には随所に花とアリスの成長という大きな物語が見られる。アリスは親との確執と孤独を乗り越えバレエを踊る。嘘をついて現実から逃げていた花も、最後には現実を見つめ受け入れる。

大胆な行動の中に繊細な感情を持つ彼女たちの毎日は一瞬一瞬が輝きに満ち、楽しそうだ。私たちにもあったであろう、そんな毎日を思い出し、青春を取り戻してみたくなる映画だ。
(井上知秋)


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