2月といえば受験シーズンだが、全ての入学者がこの試験を受けるわけではない。慶大を例に出すと各一貫教育を行う5つの高校からの塾内進学が2割程度の数を占め、その他代表的なものとしてAO入試や推薦入試がある。スポーツ面でなぜ入試の話をしているかというと、「スポーツ推薦」について話したいからだ。

慶大の体育会に属する部は多くの競技で強豪に名を連ねているが、スポーツである以上当然負けることもある。そんな時、こう言う人がいる。「慶應はスポーツ推薦がないから、スポーツ推薦のある○○大に負けるのは仕方がない」と。

確かに、慶大に「スポーツ推薦」という名を冠した入試制度は存在しないし、そのような名の入試を行っている大学が存在するのもまた事実である。スポーツを学ぶ学部を持つ大学やスポーツ推薦を行っている大学はやはり、各競技で名を聞くことも多い。

しかしながらこれらの大学と慶大が全く別物である、という指摘はいささかナンセンスに思える。慶大はAO入試という形で、ペーパーテストで測れる形の学業成績にとらわれない柔軟な選抜を目指している。SFCのAO入試の出願条件には『学術・文化・芸術・スポーツなどさまざまな分野において、研究、創作発表、コンクール、競技などの活動を通し、社会的に評価を得ている』という項目があり慶大で競技をしたい人に門扉は開かれている。




先月には2020年東京オリンピックでイギリス代表チームが日吉キャンパスを使用すると発表された。それだけ慶大のスポーツ施設は充実しているということだろう。充実した環境を提供するのは大学の大きな役割であり、それを求める若きアスリートのためにスポーツ推薦やそれに準ずる入試方式が存在する。

大学スポーツというのはプロを目指す人とあくまで学生生活の一部分として競技を続けている人が同じチームでプレーする場所である。大学が提供するのは環境だけで、前者がいつも活躍するとは限らない。推薦された人が特別扱いをされることがその制度の意図するところではないはずだ。

選手たちはそれぞれの文脈で精一杯のプレーしている。「推薦だから」推薦じゃないから」という目で選手を見るのではなく、そのプレーに純粋に目を向けるべきだ。

(安田直人)