施設の落ち着いた空間で過ごす子ども
施設の落ち着いた空間で過ごす子ども
近年、児童虐待に関する報道は多く、私たちにも耳馴染みのある言葉となってきた。しかし自分に身近な問題として捉えたことはあるだろうか。

渋谷区内に、40人近くの子どもたちを支えるとある児童養護施設がある。基幹的職員である山田さん、家庭支援専門相談員の新藤さんに児童虐待について話を伺った。


児童養護施設に来る子どもたちの事情は様々だが、その約半数を占めるのが虐待だ。虐待には、心理的虐待、身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待の4つのパターンがある。この中で最も多いのがネグレクトだが、複数の要因が組み合わさることもある。

虐待が子どもたちにもたらす影響も様々だ。リストカット含む自傷行為や異性との不安定な関係、他人と距離感をうまくとれない、など子どもたちはそれぞれが持つ課題と向き合っていかなければならない。

大人として、彼らの傷とどう接するべきか。山田さんは「親から学んだ大人に対する不信感や、身についてしまった怒りや暴力性をどう受け止め、関係をつくっていくべきか、考えることは多い」と語る。他人である者が「大人はもっと安心できて信頼できる存在なのだ」といかにして伝えるか。うまく伝わらず壁に当たることもある。

また、新藤さんは虐待された子どもを受け入れる側にも改善の余地があるという。近年は世間の虐待への認識も広がり、近隣住民の通報による発覚も増えてきたが、それだけで問題が解決するわけではない。相談や一時的な保護に対応する児童相談所と生活施設である児童養護施設間での連携や、多くのケースを扱わなければならない児童相談所の体制、経験の少ない児童福祉司の育成など社会全体で考えていくべき問題が山積している。

学生である私たちにもできることはある。まず問題に関心を持つことだ。虐待が起こったという結果はもちろん、助けを求められずストレスを溜めた親の立場に立つなど、その背景に想像力を働かせることも大切だ。そしてできるならばボランティアなどに参加し子どもと触れ合い、自らの経験を伝えること。施設の外の世界を見せることは彼らの視野を広げ、将来の選択肢を増やすことに繋がるという。   

「関心」と「繋がり」。シンプルなこの二つの言葉こそが、子どもたちの未来を照らすのかもしれない。
(青砥舞)

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