慶應義塾は、植村栄治元教授による新司法試験考査委員としての不適切な行為が、法曹養成システムに対する社会的な信頼を損ねたと認め、謝罪の意を示した。また、法務省司法試験委員会や文部科学省から要請されていた再発防止策を検討し、9月7日に開かれた記者会見でその正式な内容を発表した。

(谷田貝友貴)

 9月7日に開かれた記者会見において、慶應義塾は「新司法試験など新たな法曹養成システムに対する社会の信頼を損ね、法科大学院関係者並びに法曹関係者に多大なご迷惑をお掛けしましたことを、慶應義塾として深くお詫び申し上げます」とコメントした。また、大学院法務研究科が植村栄治元教授に対する懲戒処分(解職)を適当とする上申書を大学側に提出し、さらに慶應義塾もこれを受理していたが、植村氏が深い反省を示し、自ら引責辞職の申し入れをしたため、慶應義塾は8月3日付で退職願を受理したと発表した。

 今回の件を受け、慶應義塾は再発防止を目的とする「教育指導上の不適正行為の防止のために法務研究科教員が遵守すべきガイドライン」を策定し、その内容を明らかにした。さらに、その遵守状況や、「ガイドライン」に基づいた学内体制が正しく機能しているか否かを調査確認するため、外部委員をもって構成する新たな委員会を設置するという。また、法務研究科専任教員に対しては、「ガイドライン」の遵守を通じて不適正行為が再度起こらない学内体制が確立するまで、新司法試験考査委員への就任を自粛させる意向だ。

 再発防止策以外の対応として、慶應義塾は平成19年度大学改革推進等補助金(専門職大学院等教育推進プログラム)について、申請の辞退を申し入れた。この補助金は、高等教育の活性化及び高度な人材育成に資することを目的として、大学、短期大学及び高等専門学校が行う教育改革を推進するための事業、及びその他大学等の教育改革を推進するための事業に必要な経費を補助するものである。辞退申告が受理されれば、慶應義塾は設備備品費、旅費、人件費、事業推進費等の補助対象から外れることとなる。

なお、法科研究科現委員長は、法科大学院協会の理事を辞任することを同協会に申し入れ、9月1日付で1年間の協会会員資格停止処分を下されているという。また文部科学省に対して、文部科学省における法科大学院教育関係の一切の審議会委員等の公職の就任を控えることを申し入れた。