「長寿革命」の重要性を説く駒村教授
「長寿革命」の重要性を説く駒村教授
福澤先生ウェーランド経済書講述記念講演会が先月15日、三田演説館で行われた。この講演会は、福澤諭吉が戊辰戦争の混乱の中でも動じることなくウェーランドの経済書について講義を行ったことを記念して毎年5月15日に開催されている。今年は経済学部の駒村康平教授が「長寿革命―高齢社会を乗り越えるために―」をテーマに、昨今の高齢化社会について講演した。






駒村教授は昨今の日本の劇的な高齢化について触れた。現在、65歳以上の高齢者の人口比率は1975年の予測を大幅に上回っており、将来的には40%にまで達すると予想されている。同様に75歳以上の比率も全体の30%になる見込みだ。これにより、2020年頃から人口減少が起き始めると言われている。

高齢化は多くの問題を引き起こす。政府が高齢者に充てる社会保障給付費が急増する一方、働き手の人口減によって経済力が低下し財政赤字が拡大。さらに、現在は1人の高齢者を20歳から64歳の現役世代2人で支えている計算になるが、高齢化が進めば現役世代1人で支えていかなければならなくなる。これらにより若い世代の負担が増大することを駒村教授は懸念した。
 また、「有権者の平均年齢が上がることで行政にも影響を与えていくだろう」と行政面からも高齢化の影響を指摘した。

65歳時点での平均余命が伸びている現在では、退職後の人生が以前よりも長くなっている。今や現役年数と退職年数の比率は2対1だ。加齢とともに体力は低下するものの、「経験知」などの認知能力は必ずしも大きくは衰えない。これからの高齢社会に向けて「ボランティアや学習など、労働だけではない多様な社会参加を可能にしていく『長寿革命』こそが重要である」と、駒村教授は主張した。