「イルミネーションを見に行きたいのですが、彼女がいないので一緒に行く人がいません。助けてください」(経1男)

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男は背中で語る
男は背中で語る

「彼女なんていても大変なだけだ」と彼女に振られたばかりで自暴自棄になる所員T(経1男)を「クリスマスは家族で過ごすものだ」と励ます所員M(政2女)。しかし地方から出てきて寮暮らしのTにはそれすら叶わない。彼女がいることだけがリア充じゃないと開き直るも、他の所員たちは予定があるようで男連中で遊びにいくこともできない。

そんな踏んだり蹴ったりのTを見かねた同じく地方出身のN(法1男)とG(文1男)が一緒にイルミネーションを見に行こうと助け舟。かくしてクリスマスイブに男三人でみなとみらいに繰り出したのであった。

田舎者の3人にとって横浜は大都会の象徴であり、駅を出た瞬間からその輝きに圧倒される。イルミネーションを探そうとするも道に迷い、みなとみらいをさまよう哀れな男たちの姿がそこにはあった。カップルや親子連れが列をなす人気スポットについた時には疲労困ぱいで「これは精神的にきつい」とGが早くも音を上げる。

そうは言ってもやはりみなとみらいの夜景は美しく、しばしその輝きを堪能する三人。Tは段々と元カノと横浜にデートで来た時のことを思い出し、ブルーな気分になる。やっぱり彼女がいないとリア充にはなれない。そう実感してしまったTは「もう帰ろう」と涙目でギブアップ宣言。このとき時刻はまだ5時半であった。

家路につこうとする3人に追い打ちをかけるように、最初はまばらであったカップルが完璧な2列を組んで歩道を占拠するようになった。すれ違うたびに恋人たちの会話が胸に突き刺さる。いよいよ3人はイルミネーションに目をやる余裕もなくなり下向き加減。とあるカップルが「3年記念日だね」などと言い出すので節目を直前に別れたTは発狂寸前である。各々が「次は女の子と来よう」と決意を新たにした。

もう限界だと感じたGが次の交差点を右折して駅に向かうことを提案した。3人が交差点に近づくと青になった横断歩道から大量のカップルが押し寄せて行く手を阻む。「非リアは右折もしちゃいけないのか!」と叫んで3人は街の喧騒に飲み込まれていった。(あどみらる)