4年の任期を全うした鬼嶋監督は、とても気さくな方だった。一記者である私をすし屋に連れて行ってくれたり、しばらくぶりに私が監督にお会いしていなかった時には「久しぶりじゃないか、何してたんだ」といった感じで声をかけてくださった。もう試合後に監督のインタビューができないかと思うと少しさびしい気がする。
 一方で外野からの鬼嶋監督に対する評価は厳しかった。ダメだと思ったらすぐに代える投手継投のタイミングや、相手投手などによって代わる打順など、定石どおりの采配とは言えなかった。選手との軋轢もなかったわけではない。前任者・後藤監督の大きさもあった。
 しかし、サブマリンの合田投手やサウスポーの中根投手など、普通に見ればあまり目立たない選手を発掘したのは、鬼嶋監督だった。また、監督が「自分の一番の成果は慶應らしい明るいチームの雰囲気ができたこと」と語るように、チームの団結力は強まった。それが昨年の秋季リーグ優勝につながった。
 鬼嶋監督は今後一個人としてチームを支える立場となるが、来年のチームには大きな期待を寄せている。「今の二年生の代は、去年『最強世代』と言われた学年よりもセンスがある。来年からは早・慶・法の時代になる」と話す。主砲武内、越智・佐竹といった投手陣といった主力が抜ける早稲田に比べ、慶應の先発陣からは合田がいなくなる程度。春に向けた練習でさらにベースアップができるというわけだ。
 新チームの監督、そして主将には鬼嶋監督が築いた慶應らしい野球・「Enjoy Baseball」を受け継いで、慶大の黄金期を作って欲しい。

 (竹澤正浩)