慶應塾生新聞会 三田オフィス
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【多事創論】これからの大学教育を考える 文部科学大臣 下村博文氏

【連載主旨】 多事「創」論
「自由の気風は唯(ただ)多事争論の間に在りて存するものと知る可し」「単一の説を守れば、其の説の性質は仮令(たと)ひ純精善良なるも、之れに由て決して自由の気を生ず可からず」。世の中は一つの考えでまかり通っている訳ではない。多様な意見こそが決められた道のない今の時代を生きる我々にヒントを与えてくれるはずだ。福澤諭吉が唱えた自由の気質になぞらえ、広く多くの意見を集めて現代社会の課題を考えていきたい。

文部科学大臣 下村博文氏 文部科学大臣 下村博文氏 昭和29年5月23日、群馬県に生まれる。昭和53年、早稲田大学教育学部を卒業。平成元年に東京都議会議員初当選を果たす。平成8年には衆議院議員に初当選する。その後は自民党青年局長、法務大臣政務官、自民党副幹事長、内閣官房副長官などを歴任した。平成24年10月から12月には自民党教育再生実行本部長を務め、同年12月26日から文部科学大臣、教育再生担当大臣を務めている。
文部科学大臣 下村博文氏
昭和29年5月23日、群馬県に生まれる。昭和53年、早稲田大学教育学部を卒業。平成元年に東京都議会議員初当選を果たす。平成8年には衆議院議員に初当選する。その後は自民党青年局長、法務大臣政務官、自民党副幹事長、内閣官房副長官などを歴任した。平成24年10月から12月には自民党教育再生実行本部長を務め、同年12月26日から文部科学大臣、教育再生担当大臣を務めている。

大学力は国力 グローバル人材の育成を

「大学力」はすなわち、国力だと考えている。だから、大学が象牙の塔にならないよう、量、質共に充実した支援を行っていきたい。

たとえばスポーツの世界はすでにあらゆる面で国境を越えている。学問に関しても、そうでなければいけない。これからはグローバル人材の育成が最も重要な課題の一つになるため、学長を含め教授の国籍を問わず採用し、外国人が学生として、さらには学者、研究者として日本の大学で学ぶことができる体制を整える必要がある。そのために打ち出したのが「スーパーグローバル大学」だ。現在783校ある日本の大学の中で、37校が認定されている。そのうち、慶應義塾大学を含む13校は10年後世界大学ランキングで100位以内にランクインすることを明確な目標として掲げている「トップ型」だ。残りの24校は「グローバル化牽引型」と呼ばれ、これまでの実績を基にさらに先導的試行に挑戦し、日本社会のグローバル化を牽引することを目指す。スーパーグローバル大学の平均的な目標としては、10年後に教授の半数以上を外国人や、外国で博士課程を修了した者とすることなどが挙げられる。

センター試験廃止へ 民間試験を積極的に活用

大学の中だけでなく、入口である入学試験においても改革の必要性を感じている。すでに、大学入試センター試験を廃止するということが中教審で議論されている。それは、現在のセンター試験で問われる英語力のレベルが、グローバル人材として必要なレベルに全く達していないからだ。語学においては、読む、書く、話す、聞くという4つの力を総合的に伸ばすことが大切であるにも拘わらず、センター試験では読む力、聞く力だけが求められている。これを廃止し、今後はTOEICやTOEFL、実用英語技能検定などの民間試験を積極的に活用していきたい。これらの試験で一定の成績を収めていれば、入学試験における英語の試験を免除する方向で実現を目指している。もちろん、民間試験の内容もさきに述べた語学に必要な4つの力をバランスよく計ることのできる内容へと改善する必要がある。

このような入試形態を実行しても、帰国子女ばかりが有利になることはない。なぜなら、入学試験は英語だけでなく、国語や小論文も課されるからである。これらはしっかりとした日本語教育の賜物だ。さらに、入学試験の方式も、より多様化させるつもりだ。一般入学試験のほかにAO入試なども組み合わせることで、受験生一人ひとりが自らの得意分野を生かしてチャレンジできるようにしていくためである。

大学生全員が留学を 経済的な支援も重要に

グローバル人材の育成に欠かせないのは、留学という経験だ。「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」は、意欲と能力があり、留学を希望する全ての学生の留学を実現させる国家プロジェクトである。留学にかかる費用は給付される。コースも多様で、それぞれの学生のニーズに合うよう、工夫がなされている。大学生全員が、例え一ヵ月でも良いから留学をしてほしい。海外の大学に進むことも奨励している。留学や海外の大学に進学することで、井の中の蛙になることは避けられる。そのための動機になるのは、高校生のうちに海外留学をしていることだ。そのため来年には、高校生の留学支援も行いたい。

大学のグローバル化のほかにも、大学無償化などの実現を目指している。例えば慶應義塾大学は、お金持ちの学生ばかりが通う大学だというイメージを持たれることも少なくないと思う。しかしそれは大学にとってもマイナスに働く。格差社会が深刻化し、非正規雇用が40%近くを占める現在だからこそ、意欲、志のある生徒は誰でも入学を希望できなければならない。そのような生徒が経済的理由を克服するために、国としては段階的に、有利子奨学金を無利子奨学金にするところから始めたい。最終的には奨学金を給付型にして、返還の義務を免除したいが、まずは成績に応じた返還義務の免除や、所得連動返済型奨学金制度という仕組みを利用することを考えている。返還者が年収300万円以下の期間は返還を猶予する現行の制度をさらに充実させるものだ。経済的な理由によって受験生の挑戦の機会を奪うことなく、むしろ人間の底力にもっと期待し、貧しい家庭の学生でも安心して大学に通えるような体制を築いていくことが大切だ。