慶應塾生新聞会 三田オフィス
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【500号Project 伝-慶應の足跡-】作曲家 千住明氏

あなたは「伝」という漢字に何を思うだろうか。伝達、伝説、伝統…。今年7月に迎えた塾生新聞500号を記念して、「伝」をテーマに社会で活躍されている慶應義塾と所縁ある人物に焦点をあてていく。11回目の今回は『家なき子』、『砂の器』、『鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST』をはじめとする人気ドラマ、アニメなど幅広いジャンルの音楽を作曲し、プロデュースも手掛ける作曲家の千住明氏だ。

■千住 明(せんじゅ あきら)  1960年東京生まれ。慶應義塾大学工学部(現、理工学部)を経て東京藝術大学作曲科卒業。同大学院首席修了。代表作にオペラ「万葉集」「滝の白糸」等。テレビ、映画、アニメ、CMなど数多くの映像音楽も担当。受賞歴多数。(2014年9月現在) URL: http://www.akirasenju.com
■千住 明(せんじゅ あきら)
1960年東京生まれ。慶應義塾大学工学部(現、理工学部)を経て東京藝術大学作曲科卒業。同大学院首席修了。代表作にオペラ「万葉集」「滝の白糸」等。テレビ、映画、アニメ、CMなど数多くの映像音楽も担当。受賞歴多数。(2014年9月現在)
URL: http://www.akirasenju.com

父の言葉が決断を後押し

プロの音楽家としての道を歩み始めた最初の一歩は慶大を中退したことだ。父は慶應義塾大学名誉教授にもなった千住鎮雄氏。「慶大に無い学問を専門としなければ、慶大以外に行くことを許さない」と言われていたが、本格的に音楽を学びたいと思い、20歳の時に東京藝術大学に転入。父の言葉は幼稚舎から在学した慶應を出るという大きな決断を逆に後押しした。

そして、藝大で音楽を学問として学んだことがプロの作曲家としての自信につながっている。西洋音楽には約500年の歴史があり理論も膨大だ。基礎を藝大で学べたからこそ、その後、20年もかけて自分の思うような表現ができるようになった。しかし、若い時は基礎が大事だと思っていなかった。「テクニックで人を泣かすことができる」と思い、実際上手くいかないこともあった。だが、やがてテクニックだけでは自分の思うように表現できないという壁に当たる。その壁を乗り越えられたのは音楽を基礎から学ぶことが出来たからだ。

音楽を通じて地球の美しさを伝える

世界にはいろいろな考え方の人間がおり、それぞれが自分の正しいと思うことをしている、と9・11以降実感した。その中で音楽が出来ることは人に寄り添うことだ。人に寄り添うとは音楽を聴く人に同じ感覚を得てもらうこと。人々が自ら求めてくれるような音楽を作りたい。

そして、東日本大震災で現地の悲惨な様子を見て、多くのことを考えた。綺麗な空や海が広がっている中で立ち入り禁止の看板が並び立つ。そんな状況にこの美しい地球をなくしてはいけない、と思った。一人のプロとして、多くの人に音楽を通じてこのことを伝えていきたい。

同時にこれまで受け継がれてきた音楽の文化を自分なりに深化させて次の世代に伝承していきたい。過去の模倣でもなく、完全に新しい音楽でもない。学んだ過去からその時代に合ったものを創り、次の世代に伝える。多くの人が共感できる音楽は過去を学ぶ努力と豊かな感受性に裏打ちされている。

「今の学生達が世界を動かすようになるのは今から30年後。ある分野での最先端のランナーとして、今から準備をし、次の世代に自分なりに深め伝えていってほしい」。(在間理樹)