慶大教養研究センター主催「情報の教養学」春学期第2回講演が先月4日、日吉キャンパス来往舎で開かれた。今回は「データでサッカーの見方が変わる」と題し、慶大総合政策学部専任講師の永野智久氏が登壇した。永野氏はスポーツ心理学や人間工学を専門に研究している。サッカーのデータに関する活用方法や日本における問題点を考察した。

サッカーは野球と異なり、プレーが流動的なスポーツである。そのため、試合時に出される情報はシュートやゴールキック数といったものに限られ、野球のように選手の情報を提示するのは困難であった。しかし、近年ではシュートにつながったアシストや、選手間でのパス頻度、ボールを持っていない選手の動きなども重視するようになった。さらに練習時からデータを集め、けがの防止に役立てるという新たな動きもある。

一方、データの扱いにおける日本の問題点として「欧米と比べ、データが表に出てこないところにある」と永野氏は指摘。今後は採取した大量のデータを、どのようにして直感的に理解できる情報に加工し、人々を魅了できるかが重要になると語った。

最後に「数字にこだわらず、まずは好きなチームを応援してほしい。そして後で情報と共に見返せば、ただ観戦しただけではわからないゲームの面白いところや流れが理解できる」と話し、講演を締めくくった。

この「情報の教養学」講座は「データから情報へ」を共通のテーマとして開かれている。世の中に溢れる「データ」を価値のある「情報」に変え、新たな発見や研究に結びつける醍醐味を、さまざまな分野から招いた講師に語ってもらうことを主旨としている。