バスケインカレ1回戦・vs北海学園大学~地方勢の存在意義

12月1日 vs北海学園大学 ○ 107―73

 『優勝候補の青学大、立命館大にまさかの大苦戦!』

 もし大学バスケットが大学野球や大学ラグビーに匹敵するほどの注目度を集めるスポーツだったら、日曜日の朝刊スポーツ紙にはこのような見出しが出ていたかもしれない。残念ながら、夢物語のよう、とは変な言い方であるが、そういう記事は出ては無かったようだ。
 だが、青学大の苦戦は大学バスケファンにとっては衝撃的と言って良かろう。相手は関西3位のチームである。私は試合を見ていないのだが、聞くところによると青学大の苦手なゾーンディフェンスを立命館大が徹底して敷いていたのが効果を発揮していたようだ。それでも格下相手に68―57という最終スコアは、春のトーナメント、秋のリーグ戦と合わせて3冠を目指す大学界の盟主としては許されるものではないだろう。「王者青学、危うし」という印象を抱かざるを得ない。
 大学バスケ最高峰の舞台とは言え、インカレの1回戦は消化試合のような展開になることが多い。出場する32チームのうち13の出場枠を占める関東勢が、実力差のある地方の大学を蹂躙してしまうからだ。関東以外の地方勢も、関東勢が相手だと序盤から捨て身で3Pを連発し見せ場は作るものの、結局はどこかに諦めの気持ちがあるのか、それともこれが本当に実力差なのか、1Q後半には息切れしてしまうことが多い。そういう意味で前述の立命館大の勝ちに行った姿勢は評価出来る。翌日には、九州1位の鹿屋体育大が関東10位の大東大に勝利。関東勢の一角が、2年ぶりに初戦で姿を消したのである。

「今年のインカレは何かが起こる――。こりゃあ、慶應もちょっとヤバいぞ――」。

 しかし、心配性な私のその考えは、幸いにして杞憂だった。北海道2位の北海学園大を相手に競る時間帯こそあるがリードをじわじわ広げる展開。緊張感の無い展開に、試合後の佐々木HCも「(悪い点も)仕方ない」と話すほどだった。

ティップ・オフに集中する10選手。
ティップ・オフに集中する10選手。
「全国」の舞台としてのインカレ。だからインカレは、インカレたりえる。

 さて、今回は慶大についての言及はあえて控え、別のことを記していきたい。

 慶大と対戦した北海学園大。北海道2位でインカレに進出してきたチームだ。キャプテンで、4年生としては唯一ベンチに入った#4松本は「目標は自分達のバスケをすること。そこそこ出来たし、でもまだ出来ると思います」と、喜びも悲しみも感じさせない表情で話していた。立命館大や鹿屋体育大とは違い、はっきり言って彼らには慶大に勝つ気など毛頭無かっただろう。ある意味、地方勢の「いつもの姿」だ。
 だが、松本の次のコメントに、少しだけはっとした。

「自分の出た高校は弱小。でも、弱小でもこうやって全国の憧れの舞台に行けて良かった」

終了間際に出場し、1本決めた北海学園大・#4松本。ベンチや応援席から歓声が上がった。
終了間際に出場し、1本決めた北海学園大・#4松本。ベンチや応援席から歓声が上がった。
 関東で大学バスケにかかわる人間にとって、関東の舞台は実質「全国」である。北海道から沖縄まで、各地の有望な高校生が集まりしのぎを削る。結果、インカレで勝つのはいつも関東勢である。大学バスケを知った当初に思ったのは、なぜインカレのタイトルを取ることが、各チームにとって最も重要視すべきポイントであるか、ということだった。一発勝負で成績を決めるインカレより、長い期間をかけてリーグ戦のタイトルを取る方が、チームの強さをより反映した結果が得られる。だから、リーグ戦こそが最も重視すべきタイトルではないかと思っていた。
 インカレが重要なのは、それが全国の舞台だからだ。実質「全国」の舞台とは言え、あくまで関東は関東。インカレを最高の全国の舞台にしているのは、まぎれもなく関東も含めた各地域の激戦を勝ち抜き、舞台に上がる切符を手にした全国各地のチームである。

「北海道で大学バスケをやる意義は、普通は高校で競技をやめるところで、大学でも続けることで精神的に成長出来ること」(松本)

 4Q8分に、それまでベンチで静かに座っていた松本に出番が来た。ケガをしているわけではなく、もうこの時点でほとんど代替わりが終わっているのだという。だから、試合に出るのも指示を出すのも3年生以下の選手やコーチに任せていたのだ。
 2分の出場の中、松本が記録したのは2得点。前年にチームが出場した際は、日体大相手に敗れ、同じ2分間の出場の中で松本自身は得点を挙げられなかった。そういう意味では、彼自身の成長を示したことになる。

 彼がこの1年で示した成長は、確かに平凡なものだ。しかし、そうした選手一人ひとりの成長を糧にし、日本の大学バスケは成長していく。

(2008年12月1日更新)

文・写真 羽原隆森
取材 羽原隆森、阪本梨紗子、金武幸宏

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