人間なら誰しもが住んでいる家。その家について最近は、環境に優しい家や耐震構造の家など、単なる家ではなく、様々な付加価値を加えた家が売りにされている。そのような状況の中、今回は「頭の良い子が育つ家」というユニークな視点から家を研究した、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究准教授である渡邊朗子氏に、この頭の良い子が育つ家について話を伺った。

 まず、この頭の良い子とはどのような子どもをさして言うのか。これは、単に勉強が出来る子どもということにとどまらない。感性に優れている、状況判断力に優れていてよりよい解決策を出すことが出来る子どものことを意味している。

 では、実際に頭の良い子が育つ家とはどのような家なのか。渡邊氏によると、1つには子どもが自分の勉強部屋で勉強しないで、家族の気配を感じながら、リビングやダイニングなど家中どこででも勉強しているということが挙げられる。また、動線が交わりやすい家ということも重要だという。これは言い換えれば、家族同士が顔を合わせやすく、コミュニケーションがしやすい家ということになる。つまり、頭の良い子が育つ家というのは、家族のコミュニケーションがしっかりとなされている家なのである。なぜなら単純な話、子どもにとって親というのは自分よりも知識が豊富なため、子どもは親との会話により自分の知識を増やせたり、考える力を伸ばせたりできるからである。

 では、このような特徴を持つ頭の良い子が育つ家とは、初めからそのように設計されていなければならないのかというと、そのようなことはない。重要なポイントは、家族同士が円滑なコミュニケーションをとれる工夫をするかどうかなのである。例として、家族共有の本棚を設けるといったことが挙げられる。これにより、子どもは親がどのような本を読んでいるのかがわかる。逆に親は今、子どもがどのような本に夢中なのかがわかり、それを話題に出来る。

 しかし、ここで1つ疑問が生じる。それは、子ども部屋とは果たして必要なのか、ということである。家族の気配を感じられるリビングなどで勉強したほうが良いということはつまり、子ども部屋は必要ないのでないかと思われる。だが、実は子ども部屋には、子どもの自己の確立を促すという役割がある。全ての動物に縄張り意識があるように、子どもにも自己の独立した領域がないと、いつまでも自立した人間になれないのである。要するに、子ども部屋は過度に立派である必要もないし、そこで勉強する必要もないが、子どもの自立にとって必要不可欠なものであると言えるのだ。

 ちょっとした工夫で、家は頭の良い子が育つ家に変身する。将来あなたも自分なりの工夫で、自分なりの頭の良い子が育つ家を作ってみたらどうだろうか。

(北澤栄章)