学生が主体となって立ち上げられた「東京学生教育フォーラム」。今回、その学生団体が「学生による教育学生会議」という新書を出版することとなった。本書は、教育再生会議の教育に関する無責任な語り方を変えることを目的として製作された。

 「東京学生教育フォーラム」は、「学校教育の実態を客観的に把握し、現場の声に耳を傾ける世論を作りたい」という目標を掲げて活動を行ってきた。データではなく、経験に基づいた談話や教育現場の実態を把握できていない委員会に、疑問を投げかけるためである。出版を目的とした教育政策の勉強会として立ち上げられ、慶應をはじめ7つの大学から学部・専門問わず、教育に興味のある総勢23名の学生が集まった。この勉強会は、「教育内容・教育課程」、「教育の資質向上・教員免許の更新制度」、「学校選択制」、「教育委員会などの教育行政」という4つの分科会から構成されている。そして、この4つの分科会がそれぞれ1項ずつ担当し、ひとつの新書としてまとめ上げた。本書は、「ゆとり教育世代が考える『学力問題』」、「教師は本当にダメになったのか」、「学校選択制はバラ色なのか」、「教育委員会はどうあるべきか」の4章から成っている。いずれも、今の教育制度、教育再生会議に疑問を投げかけるものとなっている。

 出版に至るまで、フォーラムは何度も苦難を経験したそうだ。出版にあたっては、理念の共有ができていなかったことが問題点だったという。執筆途上でメンバーそれぞれが違ったコンセプトを描いており、何度も意見の衝突を繰り返して、内容の土台を最初から練り直し、再び一から原稿を作成することもあった。また、出版というプレッシャーや締め切りが迫るにつれて生まれる焦りなどで、仲間割れもあったという。

 出版社の出版の依頼をするにあたっては学生による出版物という質的保証がないことや団体の存在を知られていないがゆえに出版を断られたこともあったという。そして、直談判で原稿を持ち込むというなんとも無謀な方法であったが、ようやく受け入れ先を見つけ、今回の「学生による教育再生会議」の出版にいたった。

 学生が教育について考え直すという、今までにはない出版物である。ぜひ一度手にしてみてはどうだろうか。    

(阪本梨紗子)