開幕前、慶應は昨年まで主軸として活躍した「最強世代」が引退したこともあり、前評判は低かった。しかし、ふたを開けてみれば昨年同様の快進撃。早慶戦に敗れ惜しくも優勝を逃したものの、二位で春季リーグ戦を終えた。
 今年の慶應の強さは打撃力にある。リードオフマンとしてチームを引っ張った渡辺、早慶戦で幻の本塁打を放った金森、打点とホームランでリーグ二冠の岡崎、そして早慶戦でスタメン起用され二戦連続の本塁打を放った佐藤翔など他チームを圧倒する陣容。「今の二年生は去年の四年生よりも素質がある」と鬼嶋監督は目を細める。
 また投手陣は去年の主軸が残り、活躍。特に昨季5勝を挙げた加藤は今季も5勝をマークし、左のエースとして活躍した。
 しかし秋に向けての課題は山積みだ。加藤は早慶戦でフォームを崩す場面が見受けられた。またエースとして期待されていた四年生の合田は結果が残せず1勝止まりとブレーキ。
 打撃陣は特定投手に打てない傾向がある。昨年まで苦手にしていた清代(明治)を克服したのは評価できるが、小林(立教)に対しては相性が悪く、昨年は打ち崩した宮本(早稲田)に今季は抑えられた。
 宮本は昨年の早慶戦での敗戦から雪辱を誓い、今季に臨んできたという。慶應も今季は早慶戦で悔し涙を飲んだ。伸び盛りのチームがこの経験を肥やしにさらなる成長ができるかが期待される。

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 今季から東京六大学野球連盟の方針により、ベンチ入りできなかったメンバーは学生席で応援することになった。應援指導部の指示に合わせて一生懸命応援する姿が見られる。
 今年の早慶戦は第一戦は3万5千人、第二戦では3万7千人の観客が神宮球場に集まった。いずれもその日行われたプロ野球全試合を上回る観客動員数だった。プロ野球で実数発表が行われるようになった影響もあるが、春の早慶戦の人気ぶりがうかがえる。