慶應義塾大学は9月28日、文部科学省から共立薬科大学との法人合併認可を受けた。合併に伴い「慶應義塾大学薬学部」が誕生する。

 慶大に薬学部が設置されることで、今までの入試地図はどのように書きかえられるのだろうか。2つの予備校に来年度の入試動向を予想していただいた。 

 まず、河合塾教育研究部の見解は以下の通りだ。「模擬試験の志望者動向を見ると慶應義塾大学薬学部は高い人気を誇っています。関東地区の私学の薬学部は、これまで東京理科大学が最難関でしたが、状況は一変したと言えるでしょう。昨年の共立薬科大学時代に比べて、受験者層も変化すると思われます。つまり、難関国立大薬学部を志望する受験生にとっては、最適な併願私学の新設となったわけです。このような動向は、他大学の入試難易度や倍率にも影響することが予想されます」

 私大薬学部受験専門予備校の薬学館塾長の小林正氏は、「合併により受験者数は当然、増加するでしょう。私立薬学部を第一志望にする受験生のほか、国立大との併願者がいます。また、薬学部は理科1教科のため、最初から薬学志望の受験者だけでなく他学部と併願する志望者も加わります。慶應理工学部受験者が、『慶應に入りたい』という理由で薬学部を併願することも大いに有りうるでしょう」と語る。

 受験生にとってどのようなメリット・デメリットが予想されるかという質問に対して小林塾長は「デメリットはもちろん『入るのが難しくなること』です。しかし、メリットはそれ以上に大きいです。現在、薬学部を卒業した学生は主に薬剤師か製薬会社の研究室に就職することが多いです。ところが、製薬会社の研究室への就職は狭き門であり、今までは薬学部トップである東京理科大でないと難しかった。OBとの結びつきが強い慶應であれば就職の可能性が期待できるでしょう」と回答した。また、総合大学であることも受験生にとって多様性に富んだ大学生活という点で魅力であるという。

 両者とも大きな変化を予想しているが、やはり詳細は蓋を開けてみなければ分からない。来年2月の受験結果が注目される。

(川上典子)