慶應塾生新聞会 三田オフィス
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【走り続ける塾生】Orchestra MOTIF代表 法学部2年 日置 駿さん

バイオリンを構える日置さん

「夢」は音楽を通し平和を築く外交官
クラシック音楽はなじみにくいと考える人は多いだろう。そのようなイメージを持たれやすいクラシック音楽と、なじみのない聴衆との距離を縮めることを目指す塾生がいるのをご存じだろうか。Orchestra MOTIFの代表を務める日置駿さん(法2)だ。

Orchestra MOTIF(以下モチーフ)は、2012年に日置さんによって設立されたオーケストラ団体だ。設立に至った理由としては二つある。まずは、国内に目を向けた側面だ。日本において、クラシックコンサートにはなかなか観客が集まらない。もともと生計を立てづらい職業である音楽家が、ますます演奏しづらい環境になっている。そこで「お客様との距離を縮めて、音楽家が心から楽しんで演奏できるようにしたい」という思いを持ったそうだ。

次に、国際的な視点に立った側面がある。日置さんがヴァイオリンを始めたのは3歳の時。その頃鑑賞したクラシックコンサートで、鳥肌が立つほどの感動を覚えたそうだ。その経験を機に「全ての子供たちが音楽に平等に触れる環境を作れたらよいのではないか。音楽の素晴らしさを世界中の人々に伝えたい」という夢を抱くようになった。一見方向性の異なる目的が人と音楽をつなぐという点で結ばれ、モチーフは誕生したのである。

団体が始動した今、目指しているのは「音楽を音楽の届かないところに届ける」ことだという。世界には貧しかったり、幼くして親をAIDSで亡くし、また自身も感染したりと、音楽を楽しむ余裕のない子供が大勢存在する。その状況を「自分自身の力で変えられるとは思わない。けれども、子供たちが一度も音楽を聴いて気持ちが高揚することなく過ごしていくのを、自分がアクションを起こすことで変えたい。ただし、決して傲慢になってはいけないと思う。とにかく自分に出来る限りのことをしたい」という強い思いを抱いているのだ。

実際にモチーフは今年の3月にミャンマーの養育施設を訪れ、親を持たない子供たちのために演奏会を開くことを予定している。ゆくゆくは音楽教室を作るなどし、ミャンマーに限らず世界中の子供たちが音楽を楽しめるきっかけを作る団体へ成長させたいそうだ。また、活動を通して「音楽をただ娯楽として聴いてもらうだけでなく、世界中の子供たちに音楽を届ける活動が音楽家にもできるということを、一人でも多くの演奏家に知ってもらいたい」とも謙虚に、だが力強く語った。

しかし、日置さんは職業音楽家を目指しているわけではない。小学生から変わらないもう一つの夢があり、それは外交官になることだ。「日本を代表して、国際社会で起きている紛争の解決の中心となるような人になりたい」と考えているそうだ。

モチーフの活動を始めるまでは漠然と外交官になりたいと考え、音楽は副業で時々コンサートを開ければ、と考えていた。しかし、活動を始めたことにより音楽家と外交官の二つが、実は同じ目的を目指していることに気付いたそうだ。「私にとって音楽は武器であり、言葉。音楽に感動できる力は誰もが平等に持っている」と話す。外交官になり、音楽を通して平和を築いていきたいという夢が、常に胸の中にあるのだ。

最後に「モチーフに限らず、ぜひ、クラシック音楽のコンサートを聴きに来てほしい。なじみのない人がほとんどだとは思うが、一歩踏み出して足を運んでいただければ」と語った。世界中に音楽が届くその日を目指して、日置さんは今日も未来へと歩み続ける。  (阿久津花奈)