学園祭は演奏や舞台の上演など、日頃の活動の成果を多くの人の前で発表する場である。日本最大級ともいわれる三田祭は、学内の行事であるだけでなく大勢の人の目に触れるもはや公共の場である。

 そんな晴れやかなはずの日にも意外な危険性が含まれている。それは著作権(知的財産権)である。

 何かを創作した場合それに対する著作権を持つ。例えば、誰か他の人の脚本や曲を使用する場合、その人の著作物を使うため、場合に応じて許可や使用料などの必要がでてくる。通常、学園祭など営利目的でなく、料金を取らず、報酬を受け取らない金銭の授与が行われない場合の公演や演奏に著作権処理の必要はない。

 しかし、普通の著作権とは別にもうひとつ意外と知られていない権利がある。それが同一性保持権だ。これは著作物を無断で変えられることにより、著作者の人格の侵害が認められるというものだ。

 慶應義塾大学大学院法務研究科小泉直樹教授に身近に起こり得る事例を挙げていただいた。一番分かりやすい例は替え歌やパロディである。他に舞台の脚本や演出の一部改変が挙げられる。しかし、完全に原作を再現することは不可能である。やむを得ない場合に関しては許されるが、どこまでがやむを得ないのかの基準には曖昧な部分が残されている。

 模擬店で音楽を流す際は「短時間かつ軽微な使用」であるため、JASRACは本来店舗で流す際に必要な使用料を現在はとらない方針である。迷ったときは脚本の場合は日本脚本家連盟などの団体、音楽の場合JASRACのホームページ等を参照し、必要に応じて問い合わせてみると良い。

 基本的に学園祭で行われる行為の多くは、今のところ訴訟などの問題とされることは少ない。しかし、事例ごとに判断は異なり、予期せず警告を受ける可能性はある。自由な創作活動が妨げられてはならない。ただ、何より、多くの人の目に触れることを意識して、著作者の権利を頭の片隅においてほしいと思う。

(川上典子)