会議に臨む小松崎さん(提供:日米学生会議)
議論を通じた新たな発見

「日米の学生が共にフィールドトリップに参加し交流を深め、議論する。その中で得た経験を、参加者が長期的に社会に還元できる会議にしたい」と語るのは、日米学生会議の実行委員長を務める小松崎遥平さん(法3)だ。

日米学生会議は、日米両国の学生が約1カ月にわたって共同生活を送る学生交流のイベントである。さまざまな議論やフィールドトリップと呼ばれる訪問研修などを行い、世界について相互理解を深めることが目的だ。毎年日本とアメリカで交互に開催されている。今年は日本で開催され、アメリカ人学生と日本人学生の各36名ずつの合計72名が、京都、長崎、岩手、東京を回った。

参加者は、それぞれの興味に応じた7つの分科会に分かれて議論をする。安全保障や教育、食糧問題、情報技術など、時代を反映しているものや自分たちで実感できる問題が議題として設定される。議論は結論を出すことだけではなく、新たな問題を見つけたり、世界を自分の問題として捉えたりする機会にもなる。

会議には言語の壁を乗り越える工夫がある。会議中の使用言語は英語だが、話の流れを遮らずに手助けを求められるのがハンドサインだ。指でCの形を作れば、clarify(もっとわかりやすく)、手でTの形を作ると、translate(翻訳して)という意味になる。

また、文化の差を埋める工夫として、会議中には言いたいことを何でも言うことができるリフレクションという場が設けられる。互いの本音を知ることが仲間と分かりあうことに繋がっていく。

小松崎さんが日米学生会議の存在を知っていたのは彼の叔母がこの会議のOBだったからだ。中学や高校のときからリーダーや委員長を務める機会があった。しかし、周りは自分を評価してくれる一方で、自分自身では本気で何かをやり切ったと言えることがなかった。大学に入り、この会議に応募する際、「本気じゃない自分におさらばしよう」と決めた。

会議が忙しく怠惰になるときもあった。それでも日米学生会議をやり遂げ、この会議が好きだという理由で、会議最終日に行われる実行委員選挙に立候補し選ばれた。実行委員長になったからには「会議を作っていく立場として、今度こそ本気になる」と小松崎さんは意気込む。

会議を経て変化したことは、相手が外国人だ、と身構えずに交流ができるようになったことだ。また、面白い考え方の人にたくさん会い、自分の問題意識に基づき自由に議論することで、自らが何を考えてきたか確かめる機会が増えたという。

そして何よりも、日常では経験できない機会が増えることも変化の1つだ。日米学生会議に参加しているということで、迎賓館や研究機関を訪ね、大使館の公使や企業の社長など普段会えない人に会う機会も得られる。小松崎さんは「単なる人脈作りではなく、互いに好意を持って平等な関係で人に会うことができる。人との繋がりが大きくなることは、自分の進路や日本の将来を考えるチャンスである」と語る。小松崎さん自身は、会議で身につけた英語力や国際感覚を活かして、公に役立つ仕事をしたいと思っているそうだ。

「誰もが本気になれる環境があるのが日米学生会議」と小松崎さんは言う。12月には今年の会議の報告会が、2月から3月には選考が行われる予定だ。日米学生会議は、恵まれた環境の中にいる慶大生が、自分自身の持つ可能性を広げるきっかけになるのではないか。  (長屋文太)