女性としての魅力の無さに悩んでいます。なにかいい方法ありませんか?(文1女)

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そんなとある素朴な疑問がその事件のすべての発端だった。

お互いに体型に隠れた悩みを持つ所員Y(文2女)と所員O(法2女)。人はコンプレックスとは素直に向き合えないもの。「ちょ、Yよりはあるから!」「どこが?どこに?」一度火のついた闘志はもはや収まるところを知らない。「勝負は1カ月後。そこで決着をつけようじゃない!」。そんなこんなでバストアップ対決が幕を開けた。

二人の対決の行方はいかに!?

まず所員Yが訪れたのは、三田キャンパスの生協である。先日ツ○ッターで目にした一つのつぶやきを彼女は忘れていなかった。生協に入るや否や、飲み物コーナーに足を運ぶ。彼女が目を輝かせて見つめる先には、見事に陳列されたさまざまな味の調整豆乳。抹茶やバニラにとどまらず、さつまいもから杏仁豆腐まで抜群のラインアップだ。「ここからここまで全部ください!」店員さんは思わず聞き返す。
「ぜ、ぜんぶ?」「はい!大豆イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをしてくれるんです、胸が大きくなるんです!」在庫も合わせた総購入数は一日5本以上飲んでも余るほど。想像するだけで、Yの期待は一心に高まる。「あまり飲みすぎないようにね」。そんなお姉さんの忠告も、未来の自分の胸に思いを馳せているYの耳には届いていなかった。

一方、日吉キャンパス在籍の所員Oは「胸を大きくしたいの?それなら筋トレが一番!」という筋肉自慢の先輩S(商2男)からアドバイスを受けた。「大胸筋を鍛えたいのですが!」と協生館のトレーニングルームに一心不乱に駆け込むと、優しそうなトレーナーさんが「バストアップをご希望ですね」と笑顔でお出迎え。トレーナーさんの笑顔に彼女は自らの勝利を確信した。

バタフライ・マシンというなんだか強そうなネーミングのマシンは大胸筋を鍛えるにはうってつけ。トレーニング仲間のマッチョなお兄さんたちから筋肉雑学を分け与えてもらい、Oの筋トレライフは順調に思われた。

そして約束の日、決戦の火蓋が切って落とされた。そこに現れた二人の姿は、違う意味で、以前の面影を欠片も残していなかった。小柄だった所員Yは糖類の過剰摂取で胸ではなく、腹まわりを中心に約2倍の増量を遂げ、鍛えすぎた所員Oは体育会アメフト部をも凌ぐ立派な大胸筋を身に付けていた。どうやらS先輩は何か勘違いをしていたようだ。

お互いの思い描いていたのとは程遠い姿に、「やっぱり普通が一番だよ……」と慰め合うYとO。二人はトボトボと帰って行った…。  (ワースト1)