プロジェクトに寄贈された出征者の手記

資料から戦時を見つめ直す
先月、「慶應義塾と戦争」アーカイブ・プロジェクトが発足した。これは当時の慶應義塾を見つめることにより日本における戦争の時代を問い直そうというものだ。今回はこのプロジェクトの担当者である、慶應義塾福澤研究センターの都倉武之准教授に話を伺った。 (武中萌)

都倉准教授は「戦争の時代をしっかりと記録して残していき、今後研究調査をさらに進めていくスタートをつくるためのプロジェクト」だと話す。

戦争について何度か学校をあげての調査が行われようとしたが、どれも頓挫した。戦争の捉え方の難しさから敬遠もされてきたそうだ。しかし、戦後70年近く経ち、戦争経験者の多くが90歳を迎える今を逃せば、永遠に機会が失われてしまうという危機感からこのプロジェクトは発足した。

主な活動は、慶應義塾や塾生関連のオリジナル資料の収集、当事者への聞き取り、戦時期における慶應義塾のデータの整備などだ。特定の立場からメッセージを打ち出すのではなく、戦争の時代を知るための基礎的なデータや資料を集めることに目的を置いているのだという。戦争体験は当事者一人ひとりによって異なり、程度もさまざまだが、どれもが真実だ。幅広くデータやサンプルを集めることが戦争の時代を考える上で重要になっている。

例えば、学徒出陣で何人の学生が戦地へと送られたのか未だ不明なことに対して、古くから慶大に残る学籍簿などを用いてデータを明らかにする作業を行っている。外部公開されない資料のため、この調査方法は慶大内部だからこそできるものである。

さらにこのプロジェクトは集めたオリジナル資料やデータを展覧会やインターネットで積極的に公開し、多くの人に直接見てもらうことで戦争について考える機会を作ることを目標としている。調査をして得られたものを提示し、受け手に限定的なイメージを与えるのではなく、受け手が自分なりに考えられるように情報を提示するというのが方針だ。

活動を始めて1カ月。これまでに多くの情報や資料が寄せられている。こうした状況に都倉准教授は慶應義塾では人のつながりが強いとした上で、「まだまだいろいろな体験をしている人がいると実感している。だからこそ一つ一つのディテールをできるだけたくさん残していくことに意義がある」と述べた。

また、プロジェクトを通じて塾生に伝えたいことを伺うと、「戦争を教科書の知識として知っている人は多いが、本当に生身の人間がやっていたことだと改めて考え直してほしい」と語った。日本の歴史を勉強するというのは、日本人とはどういうものかと考えることであるという。戦争の時代も今の時代も日本人として同じ性質を持っており、そこには連続性がある。歴史や戦争を考えることで日本人とはどういうものかという思考を深めることができ、その先を自分で考えることが大切ではないかという。

今年10月にはポータルサイトの開設、11月末ごろには展覧会が開かれる予定だ。同じ年代と環境の中で勉強していた塾生が戦地に赴いたという事実を、直接自分の目で見て考えるという作業が今必要なのではないか。