11月1日、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、松崎有未准教授、同産婦人科学教室の吉村泰典教授らの共同研究グループは、ヒト子宮筋幹細胞の存在を同定し、その機能の解析に成功したと発表した。

 発表によると、同グループは幹細胞活性の高い細胞集団であるSide Population(SP)細胞群を、ヒト子宮筋組織から安定的に得る方法を確立。子宮筋SP細胞を免疫不全マウスの子宮に異種移植したところ、子宮筋組織が再構築されることを発見した。さらに、同細胞を脂肪・骨誘導培地で培養させたところ、脂肪細胞・骨細胞の出現が確認された。これらのことは、子宮筋SP細胞が同組織の幹細胞を含んでおり、間葉系幹細胞に類似した性質を有していること、さらに脂肪変性や骨変性を起こすことのある子宮筋腫の発生過程において、幹細胞が重要な役割を果たしていることを示唆している。

 今回の研究成果は、これまで手術以外に有効な治療法のなかった子宮筋腫に対して、幹細胞に着目した治療法の開発への手がかりを開いたという点においても、極めて重要といえる。

 研究に携わった岡野教授は今回の発表について「この研究で我々は、慶大産婦人科学教室との共同によりヒト子宮筋組織から幹細胞の分離に世界で初めて成功いたしました。同幹細胞は、子宮筋腫の発症にも大きく関係するものと考えられます。この成果は、21世紀COEプログラムにより、基礎の幹細胞の研究室と臨床の研究室の一体型の研究体制を作ってきたことによりもたらされたものであり、このような素晴らしい共同研究を行うことができたことを嬉しく思っております」とコメントしている。