今年の七夕祭で打ち上げた花火(慶應花火師会提供)
夏の風物詩といえば花火を思い浮かべる人も多いだろう。ほとんどの人にとって花火は鑑賞するだけのものだが、慶大には花火の打ち上げに関わる珍しいサークルがある。
SFCでは七夕祭、秋祭と年に二回文化祭があり、そのフィナーレは盛大な花火によって締めくくられる。その花火を打ち上げているサークルが「慶應花火師会」だ。
具体的には、文化祭実行委員と共に話し合いを重ねて花火の打ち上げを企画し、それを踏まえて業者へ花火の発注、行政に提出する申請書の作成などを行っている。また文化祭の打ち上げ当日には警備や打ち上げ後の後片付けなども自分たちで行っている。
各文化祭にはそれぞれテーマがあり、このコンセプトから花火師会のメンバーと実行委員がどのような花火を打ち上げたいか考え、それぞれの案を出し合い一つの企画にまとめあげる。音楽に合わせてどのタイミングで、どんな種類の花火を打ち上げるか一から自分たちで考えていく。 主な活動は年に二回の文化祭での花火の打ち上げだが、サークルのメンバーで花火大会を鑑賞しに出かけ、花火についての勉強会を開くなど、花火に関わる他の活動もしている。また秋には花火鑑賞士という珍しい資格も取るそうだ。

花火の光に努力の影
花火師会といっても、最初から花火の知識がある人たちばかりが集まるわけではない。勉強会や、花火大会で、先輩に花火の名前を尋ねるなどして学んでいく。副代表の宮地茉萌さん(環2)はもともと花火が好きだったこともあり、また花火を打ち上げるという珍しい体験に魅かれてサークルに入会したと語った。花火を見るのが純粋に好きな人から、花火の構造が気になる人まで理由はそれぞれだが、花火師会には個性的なメンバーがそろっている。新入生だった当時、代表の近藤辰哉さん(環3)はそんなメンバーを見て、「この人たちと何かやりたい、この人たちのことをもっと知りたいと思ったことが一番の入部へのきっかけだった」と話す。他ではできないような体験ができることが一番の魅力だとも語った。
「つながる星々」をテーマに、今月6日に第24回七夕祭が行われた。天気にも恵まれ、多くの観客が花火を見に訪れた。「花火が打ち上がる度に歓声が聞こえ、あのような時間を観客の方々と共有できたことは何よりの財産だ」と近藤さんは振り返る。
花火師会のメンバーは4月に新入生を迎えてからすぐ準備にとりかかり、文化祭のテーマに合わせた花火を打ち上げるために何度も話し合いを重ねてきた。当日も炎天下の中、打ち上げを成功させるために約30人のメンバーが協力しあったと言う。
一瞬の花火のために陰でこのような努力があることを知れば、花火の見方も変わってくるのではないだろうか。     (安田麻里子)