留学に限らない交流手段

新しい環境にも慣れた今、海外に目を向け留学を考え始める学生も多いのではないだろうか。そこで、留学に関して我々塾生をサポートしてくれるのが国際センターである。国際センターは留学生の受け入れや、海外への留学を希望する塾生への支援を行う組織で、慶應義塾の国際交流の拠点となっている。国際センターの事務を担当する学生部・国際交流支援グループ課長の上田千尋さんにお話を伺った。

慶大では、留学する場合には主に四つの選択肢がある。一つ目は交換留学である。世界各地の100を超える学校との協定に基づき一年間慶大から学生が派遣されるというものだ。二つ目は私費留学で、さまざまな方法やプログラムから自分で手配を行う。三つ目は数週間から数カ月という短期間の語学研修で、四つ目は夏季・春季休校中に実施される国際センター主催の短期プログラムである。国際センターでは主に一つ目の交換留学制度の運営と四つ目の短期プログラムの主催をしている。各キャンパスの学生部や学生課には国際担当の窓口が設置され、それぞれのキャンパスに合わせた対応をしている。

慶大は現在、世界各国から約1200名の留学生を受け入れている。外国人留学生の勉強や生活の面での支援も国際センターの業務の一つだ。

留学生向けに国際センター講座という授業がある。この講座は日本およびアジアに関する話題を中心にして、すべて英語で行われる。これらは日本人学生も履修が可能であり、留学生と学問を通して交流する貴重な機会となっている。留学を考えている人にとって語学力向上のチャンスにもなるので、ぜひ活用してもらいたい、とのことだ。

さらに昨年度から、短期日本学講座という新しい留学生受け入れプログラムが実施された。これは留学生と一般学生から募集された慶大の学生が共に寮で生活しながら、講義や多彩な企画を通じ日本について学ぶというものだ。参加した日本人学生からは、留学以上に充実した体験ができたという声も聞こえた。

今年も6月10日から13日に日吉キャンパスで留学フェアが開催され、さまざまな留学の情報を提供し、個別相談にも応じている。昨年は期間中のべ約1900人が参加しており、留学に興味を持つ学生は数多い。留学による就職への影響を心配する学生のために、最終日にはグローバル・キャリア・フォーラムも同時開催される。

大学生の内向き志向が指摘されているが、慶大では年々留学希望者の数は増えている。国際センターでは留学者の数だけでなく、質も高めることを目指す。「単に留学することで就職が有利または不利になるわけではなく、留学を通して自ら多くのことを経験し学び、異文化の人と交流する能力を身につけることが大事です」と上田さんは語った。

国際センターといえば留学のイメージが強く留学を考えない人にとっては無関係だと思われがちだが、国際交流の手段は留学に限られたことではない。日本にいながらでも私たちが国際交流できる場を提供してくれるなど、国際センターはわたしたちに身近な存在である。    (安田麻里子)