調査団は先月22日の全塾協議会定例会で、伊藤・諸田ペアが不正投票を行った可能性が高いと報告した。全塾協議会はこれを受けて伊藤候補に立候補の辞退を勧告。伊藤候補は勧告を退けたため、伊藤・諸田ペアの立候補取り消しをするか審議に移ったが議案は否決された。そのため当初から予定されていた通り、開票結果により事務局長と次長が選出される。   (片岡航一)

全塾協議会は先月22日に開かれた1月定例会にて調査団の報告に基づいて審議した結果、伊藤陣営に不正があった可能性が高いと判断した。審議にあたって調査団は、告発文とともに出回った音声ファイルの全容を公開、さらに不正に作ったとされる投票用紙も物的証拠として提出した。渦中の事務局員は体調不良を理由に定例会を欠席したが、電話で疑惑について査問にかけた。さらに不正の現場にいたという事務局員も証言台に立った。
不正疑惑の内容としては、三田キャンパスにて100票を入れ替えたこと、さらには現職の名前に丸をつけた400票の投票用紙を他の事務局員に作成させたことなどを挙げた。
同事務局員は調査団の行った事情聴取で日吉キャンパスの投票箱を開けたことは認めている。開けた経緯については、「南京錠があまりに低価格で質がよくなかった。ちゃんと機能するのか確認したら、偶然にも開いてしまった」と説明している。票の改ざんについては「やっていないしそんな時間はなかった」と否認している。
また、投票用紙を不正に作成したことについては「投票用紙の余りが部室にあり、白票と区別するために丸を書きこんだ」と話している。その際、遊び半分で自分の支持する伊藤候補の名前に丸を付けたという。全塾協議会はこれに対して「余った投票用紙の処分としては不適切であるし行動が理解できない」と非難した。
内部告発とともに出回った音声ファイルは、昨年12月7日に事務局員らが全塾協議会の日吉部室で投票用紙を不正に作成する現場を録音したものであるという。そのなかで同事務局員が「何票入れ替えたっけ」「三田で100足してるわ」「400いこうか」などとと発言しているが確認できる。これについて電話での査問では、記憶にないという供述をしており、依然として発言の真意は明らかになっていない。
加えて調査団は、伊藤・諸田ペアに入れられた投票用紙のなかに丸の筆跡が同じとみられる投票用紙が100枚近く見つかったと報告。さらにそれらは岸・辻上ペアには確認されていない、ゲルインクのボールペンで書かれた投票用紙であった。調査団は投票期間中に票が不正に入れられた可能性を指摘した。
しかし選挙で使用するボールペンを公式に決めておらず、さまざまなインクのボールペンが投票所で使われていたおそれがある。そのためゲルインクのボールペンで書かれた投票用紙が混入していたということが不正を立証する絶対的な証拠になるいというわけではない。ただ、候補者の一方だけに大量に入っていたという事実は不可解であると調査団は報告した。

立候補取り消さず開票
調査団の報告を総合的に判断し全塾協議会は、伊藤陣営が不正投票を行った可能性は高いと判断した。この段階で伊藤氏に立候補の辞退を勧告したが伊藤候補は1週間の猶予の後、辞退しない意向を伝えた。そして後日、全塾協議会の上位7団体の代表者からそれぞれメールで伊藤候補の立候補取り消しについての議決をとった。その結果、立候補取り消しに関する議案は否決、立候補の取り消しをしないとした。
選挙結果は今月8日に行われる全塾協議会臨時会にて開示するという。予定通り、伊藤・諸田ペアと岸・辻上ペアの二組が獲得票数によって事務局長、次長の席を争うことになる。

伊藤候補、胸中明かす 「公平性に欠ける」

伊藤候補は今回の調査団の報告と全塾協議会の判断に苦言を呈した。定例会での状況も公平性が保たれているか疑問を持ったという。「選挙管理委員会の委員長と副委員長は公平性を保つために調査団から外されたが、定例会での調査報告を委員長が担当するなど、公平性に欠ける」と遺憾の念を表した。
また伊藤候補は、調査団が不正の疑惑として挙げた票の改ざんや投票用紙を不正に作成したことなどを全塾協議会は事実である可能性が高いと判断したものの、完全には立証していないと主張。さらに伊藤候補自身が不正をしたという疑いが証明されていない時点で立候補辞退の勧告を受けたことについては「疑わしいから罰すということは許されない」と述べ、全塾協議会側の審議に対する姿勢を批判した。

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予定通り、二組から選出

全塾協議会は先月22日、先の事務局長選挙で伊藤陣営が不正行為をした可能性が高いと判断し、伊藤氏に立候補の辞退を勧告した。伊藤候補には辞退を検討する猶予が1週間与えられたが、考えた末に選挙を勧告を受け入れない意向を全塾協議会に伝えた。
同定例会で、全塾協議会が伊藤候補本人の疑惑が晴れないうちに立候補の辞退を勧告しようとしたことに対して当初は伊藤陣営から不満の声が上がった。しかし全塾協議会予算補正案をはじめ、審議を行うものが多くあり思いのほか時間がおしていた。さらに今後も議会で、先の選挙騒動により本来議論すべきことが後回しになるという状況を避けなければならないと全塾協議会は説明。
最終的には不正疑惑の審議を「伊藤陣営」と「伊藤候補本人」とで分けて行う形となり、同定例会は伊藤陣営が不正を行った可能性を認めたところで閉会した。後日、全塾協議会はメールで審議した結果、伊藤候補の立候補取り消しに関する議案を否決し、取り消しをしないとした。
これにより凍結されていた開票作業は再開する。今月8日に開かれる全塾協議会の臨時会で開票結果を発表するとしている。その開票結果をもとに選出された事務局長を中心にして、新体制が発足する予定である。