来月から就職活動も本格化。漠然と思い描いていた将来が、現実味を帯びて迫ってくる。自己と向き合っては恥じ入り、焦燥感に駆られる夜が続く

▼「眠るなら目をつぶりなさい。考えるなら目を開けなさい。目をつぶって考える中身は大概くだらない」

▼ジャーナリストむのたけじ氏の詞集『たいまつ』の一節である。御年97歳。年輩者の言葉がすとんと心に落ちてくる

▼しかし、いくら目を凝らしても、用意された正解は見当たらない。「大企業に入り、出世コースに乗れば、一生安泰」といったシナリオが語られなくなって久しい

▼むの氏が駆け抜けた激動の時代にも、絶対解は存在しなかったのかもしれない

▼戦時中、朝日新聞社の記者だった彼は、敗戦を機に新聞人としての戦争責任をとる形で退社を決意。以降は故郷で新聞を創刊し筆を執った。休刊後の今も、平和を訴える言論活動を続けている

▼戦後の混とんの中、己を見つめ、自ら考え、自分の人生を決めた

▼冒頭の詞には続きがある。「決断に向かって思考するとき、目は必ず見開かれて輝いている」

▼困難に屈せず、岐路に目を背けることなく熟考し、勇断した者には、きっと夜明けが訪れる。(竹田あずさ)